「営業の即戦力として採用したけど、どうもこの人は向かないなぁ」

 「こんなに残業があるとは聞いてなかった。子どももまだ小さいし、早く帰りたい……」

――採用した側、された側の期待にギャップが生じ、労使間でのトラブルが最も多い時期の1つが、社員の採用から数ヵ月の期間です。労使間での信頼関係がまだ薄く、些細なことでトラブルになりかねません。採用における適性のミスマッチは、労使にとって不幸なことです。今回はそれを防止する運用方法、就業規則作成のポイントをお話しします。

採用選考ではここまで聞いて構わない

 採用選考は適性のミスマッチを防止する上で重要な過程です。能力や適性をチェックする試験の実施も1つの有効策です。

 私たちは、人材を採りたい企業に対して、選考時や内定前における質問、確認事項をまとめた「事前確認書」を作成し提案しています。ヒアリング、および確認事項は全部で約30項目。1例として以下のような質問や確認事項を単刀直入に提示します。

・最近1年以内の医師による診察、治療、投薬の有無
・前職、前々職の退職理由
・現在の預金額および消費者金融などからの借入有無
・残業があること
・転勤や職種変更があること
・社内のマニュアルや就業規則などについての説明、承諾

 そして、この「事前確認書」の最後には以下の文言を入れ、対象者に同意の一筆を記載させます。

 「万一、上記申告内容と異なる事実が発覚した場合や、本人が会社に提供する履歴書等の記載内容に事実に反する点がある事が判明した場合、採用取消等の措置を講ずる場合があります」

 クライアントから「ここまで聞いてしまってよいのか」と質問されることがよくありますが、結論として質問・確認事項が、

・業務目的に必要不可欠
・質問事項として得た個人情報の利用目的の明確化

という点を満たせば問題ありません。過去の労働判例において、裁判所は会社側の採用の自由を広く認め、調査の自由も大きく認めています(参考:三菱樹脂事件 最高裁 昭和48年12月12日)。