
クレープ店でアルバイト社員として働いていたところ、「君の働きぶりは正社員以上だ。ぜひ店長になってくれないか」といわれたA。快諾して店長になったものの、仕事は増え、勤務時間も増え、休みはなく、収入は増えず……と実態は厳しかった。「管理職には残業代が付かない」とはいうけれど、飲食店によくある「アルバイト店長」は、「管理職」なのだろうか?(社会保険労務士 木村政美)
<甲社概要>
クレープやアイスクリームなどの店舗販売を手掛ける会社。本社事務所の他に店舗が10カ所ある。従業員数は200名(正社員30名、アルバイト170名)。
<登場人物>
A:一人暮らしの25歳。大学卒業後食品メーカーの営業職に就いていたが2年で退職。次の就職予定がなくブラブラしていたところ、求人媒体で甲社の募集を知った。昨年6月アルバイト社員として入社後、乙店で週5日(労働時間は週40時間・時給1200円)働いている。
B:35歳。甲社の店舗運営総括責任者で肩書は本部長。
C:25歳。Aの大学時代の友人。
D:B本部長の幼なじみで、今年6月から甲社の顧問社労士を務めている。
クレープ店のアルバイト店員を、店長に抜擢
4月中旬。B本部長から呼び出しを受け本社を訪れたAは、いきなりある打診を受けた。
「乙店ね、4月末で店長が辞めること知ってる?」
「はい。昨日、店長本人から聞きました。実家に戻って就職するそうですね」
「なら話は早い。5月から君に店長を任せたいんだが、引き受けてもらえないか?」
「店長ですか?僕、ただのバイトですけど……」
「立場じゃない。見たところ、君の働きぶりは正社員以上だと思う。店長になったら現場は全部任せるし、月2万円の店長手当を支給するよ」
Aは不安も感じつつ、「B本部長が、自分の頑張りを正社員以上だと認めてくれていたなんてうれしい」と誇らしさを覚え、店長になることを承諾した。
しかし、その後の現実は過酷なものだった。