バイリンガルで学んだ英語は
ネイティブスピーカーには及ばない

 じつはバイリンガル児が早期に2つの言語の発音を獲得することと文法を獲得することに関しては、考慮すべき点もあるようです。

 バイリンガル児の中で、最も早くから第二言語習得を始める同時性バイリンガル児(編集部注/生まれた時からバイリンガル環境で育つ子ども)は、第一言語も第二言語も、どちらも発音がネイティブスピーカーにかなり近いと言えるでしょう。

 しかし近年のバイリンガル児の研究によると、同時性バイリンガル児の発音は、第一言語にしても第二言語にしても、その言語をモノリンガルとして獲得した子どもの発音とは同じではないそうです(Mayr et al.,2019;Strandberg et al, 2021)。

 同様のことが、文法獲得についてもあてはまると言われています。バイリンガル児の言語発達のモデルによると、英語を第二言語とする同時性バイリンガル児が英語に接触する時間は、英語モノリンガル児の64パーセントほどに過ぎないそうです。

 ネイティブスピーカーに近いという印象を持たれるほどの英語の発音や文法の力を持っていても、英語のモノリンガル話者との違いを埋めることは、そう簡単にはできないようです。

 このことはネイティブスピーカー並みの英語話者になるためには10歳より前に学習を始めるべきだと提案している研究でも、確認されています。

 ネイティブスピーカーのようなバイリンガルと本物のネイティブスピーカーとの間には、どうしても埋めることのできない歴然とした差があるということなのでしょう。そうなると、ネイティブスピーカーのようになることを言語学習の目標に据えて早期からバイリンガル教育を始めることは、勇み足となる可能性もあるかもしれません。