◆「褒めて育てる」が部下を壊す?「いいね!」を求める脳を“依存”から救うリーダーの言葉選び
部下が動かない、Z世代との距離感がつかめない……そんな悩みを解決するのが、ソフトバンクで「汐留の母」と呼ばれた澤田清恵著『伝え方ひとつで部下が動き出す 上司の「コミュ力」大全』(ダイヤモンド社)だ。生身のリーダーに求められる最強の武器は生成AIには代替できない「コミュ力(共感力)」。単なる同情ではなく、相手の視点を論理的に理解する「認知的共感」の技術を体系化した、悩める上司たちの「読むサプリ」だ。呼吸を合わせる基本から、自身の無意識を言語化する応用、さらには「飲み会の失敗事例」や「エース部下の退職」といった実例に基づく「しくじり」分析まで網羅。表面的なテクニックではなく、心・技・体を整え、信頼で組織を動かすための実践的ノウハウが詰まった決定版!
※本稿は、『伝え方ひとつで部下が動き出す 上司の「コミュ力」大全』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。
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つながりの喜びが「依存」に変わるとき
脳内を駆け巡る「快楽の報酬」
SNSで「いいね!」がたくさんつくと、「自分の投稿に共感してくれる人が増えた」とうれしくなるかもしれません。この心理が度起こすと、一種の“依存状態”になることもあります。
この依存の背景には、「ドーパミン」という脳内物質の働きがあります。ドーパミンは、快楽や報酬に関わる神経伝達物質で、「幸せホルモン」と呼ばれることもあります。学習意欲ややる気にも関わりますが、アルコール・薬物・ギャンブルなどの強い刺激によって過剰に分泌されると、脳が快感に慣れてしまい、さらに強い刺激を求めるようになります。
それが“依存症の正体”です。
暴走する「もっと!」という渇望
「共感」という名の幻想を解き明かす
「いいね!」を大量に獲得することで快感を覚えるようになった人は、「もっと、もっと!」と刺激を追い求め、やめたくてもやめられなくなってしまう。こうした“いいね依存”の裏側には、ドーパミンの過剰分泌があります。
そこにあるのは“共感”ではなく、“刺激への反応”にすぎないのです。
【解説】マネジメントに潜む「承認依存」の罠
SNS上の「いいね!」をめぐる脳の仕組みは、現代のマネジメント層にとっても見過ごせない重要な示唆を含んでいます。部下を動機づけ、組織を活性化させる役割を担う管理職にとって、この「ドーパミン的報酬」の正体を知ることは、健全なチーム作りの大きな鍵となります。
部下を褒めて育てることは重要ですが、もしそのフィードバックが、単なる「その場限りの甘い報酬(刺激)」になっていれば注意が必要です。
SNSの「いいね!」と同様、具体的な根拠のない称賛や、数値目標の達成のみを過度に煽るマネジメントは、部下の脳を「一時的な快楽」に依存させてしまう恐れがあります。そうなると、部下は「自分の成長」や「仕事の本質的な価値」ではなく、「上司に評価されること(刺激)」そのものを目的として動くようになり、自律的な成長が止まってしまうのです。
「刺激への反応」を「深い信頼」へ昇華させる
管理職が目指すべきは、ドーパミンによる一時的な高揚感ではなく、セロトニンやオキシトシンが関与する「安心感と信頼に基づいたエンゲージメント」の構築です。
SNS的な「いいね!」(記号的な肯定)をチーム内で送り合うだけでなく、相手の苦労やプロセスに深く耳を傾ける「本物の共感」を介在させてください。脳が「刺激」に反応する状態から、「自分の存在が正しく理解されている」という充足感を得られる状態へ導くことが、メンタルヘルス不調を防ぎ、長期的なパフォーマンスを維持する土台となります。
健全な「やる気」を設計する技術
ドーパミンは本来、学習意欲や目標達成の原動力となる素晴らしい物質です。これを「依存」ではなく「健全な推進力」として活用するには、フィードバックの質を変えることが有効です。
「すごいね」という刺激で終わらせず、「あなたのこの行動が、チームのこの課題を解決した」と意味付け(コンテキスト)を添えてください。脳内物質の仕組みを理解し、単なる「反応」を「深い納得感」へと変えていくこと。それこそが、情報過多の時代に求められる、新しい時代のリーダーシップといえるでしょう。
※本稿は、『伝え方ひとつで部下が動き出す 上司の「コミュ力」大全』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。









