「なにも起きない日常」を描く朝ドラがすごい…中身がない15分を作るって実は高度な技術?〈ばけばけ第97回〉

「わしの読みではもうじき小豆が跳ねあがる」

 クマがアイロンをかけていると、郵便屋さんが来た。受け取りもクマがやる。その間、フミ(池脇千鶴)がアイロンを――と思っても、断固としてやらせはしない。

「高いお給金ばいただいとっとに、お手伝いはさせられんです」

 クマはじつに責任感が強い、真面目な人だった。

 そんなクマのことをフミはトキに、よくやってくれるし、いい子だが、女中さんはいらなかったとヘブンに言えばよかったと渋い顔をする。

 いや、ヘブンはどんなにいってもきかなかっただろうとトキ。

 身寄りのないクマをヘブンは見捨てられなかったのだろうとトキは推察しているし、たぶん、トキもフミもその気持ちには同意するのだろう。だが、そのせいで、あまりに何もできないし、何かやると怒られるという理不尽な状態にトキとフミはうんざりしていた。

 そうこうしているとクマは、アイロンを触ったと声をあげる。ふたりは逃げるしかない。

 広い家のなかを追いかけっこして、誰もいなくなった部屋にこっそり、司之介(岡部たかし)が現れる。

 こそこそと金庫のなかから札束を持って外に出ていく。

 お。何も起こらないと思ったら、何か不穏なことが起こり始めている? 劇伴も不穏な音を奏でる。

 退屈な日常に風穴を開けてくれそうな人物、それはやはり司之介。

 司之介は喫茶店で誰かと待ち合わせ。落ち着かない顔をしていると、あやしい男がやってきた。

 荒金九州男(あらがねくすお/夙川アトム)と名乗る。金遣いの荒い九州の男という名前に、島根の借金取りの銭太郎的な、お金に関係するキャラに違いないと視聴者は想像する。

 荒金は司之介に「あんたの馬刺しを見せろ」と言う。

 馬刺し? それはお金の意味だった。

 かなりの大金を差し出す司之介。家から持ち出したお金にプラスしてお金を借りてきたという司之介に、荒金は「うまーく」やって大金持ちにしてやると言う。馬刺しだけに「うま」くやる?

 やばそうである。

 うまい話とは、小豆相場だった。

「わしの読みではもうじき小豆が跳ねあがる」と荒金。

「信用せい、わしゃ、熊本のからしというからし、レンコンというレンコンを仕切っとう男ばい」

 馬刺しだのからしだのレンコンだの、裏の意味があるのかないのか、さっぱりわからない!

 司之介は生活に困ってもいないのに、なぜ、こんなあやしい人物に大金を託すのか。

 ドラマも終盤戦に来て、序盤のうさぎ相場のようなことがまた起こってしまうのか――。