“ドタキャン”されたおかげで、「幸運」がもたらされた

 この効果は、僕も実感してきました。
 川合さんから長年にわたって薫陶を受けてきた僕は、とにかくどんなときでもネガティブな言葉を使わず、ポジティブな言葉で「自分を騙す」ことを徹底。その効果を生身で学んできたのです。

 たとえば、こんなことがありました。
 プルデンシャル生命の駆け出しの営業マンだったころのことです。当時は、一件のアポイントの成否に一喜一憂しながら、必死で営業に駆けずり回っていました。

 そんなある日、僕は、社会人2年目の金融マンに会うために、都心部のオフィスから、横浜の高級ホテルのラウンジに移動。ところが、アポイント時刻の20時半の15分ほど前に着席して、コーヒーを注文したときに携帯電話が鳴りました。

 “ドタキャン”です。
 営業マンにとってはものすごく大切なアポイントですが、お客様にとってはたいして重要なものではありません。だから、“ドタキャン”は想定内のことではあります。だけど、時間と労力のロスを考えると、ドーンと気持ちは落ち込みます。しかも、相手は社会人2年目の若者ですから、正直、腹も立ちます。

 だけど、こんなときに、「ついてないな」「運が悪いな」などと口にしても運気が下がるだけですから、「よっしゃ、“ドタキャン”してくれたおかげで時間ができた。この時間は、俺に対するプレゼントや」と自分に声がけをしました。川合さんを見習って、自分を騙そうとしたわけです。

 そして、フェイスブックのタイムラインを眺めていると、知人が吉祥寺にある有名な赤身肉屋で食事しているという投稿を発見。「これや!」と思いました。

 その知人と一緒に焼肉を食べている人たちと親しくなれば仕事につながるかもしれないし、有名店であるそのお店にも行ってみたかった。すぐに横浜のホテルラウンジを飛び出して、90分かけてお店に駆けつけたのです。

“普通じゃないこと”をすると興味をもってもらえる

 お店に着いたのは22時過ぎでしたが、それがよかった。
 知人から紹介された店のオーナーに、すごく気に入っていただけたのです。

「なんで来たん?」
「いやぁ、横浜でお客様にドタキャンされたんで来ました」
「お前、いきなり横浜から来たんか? オモロいな、お前!」

 まぁ、僕は半分ヤケクソでお店に行ったのですが、たしかに考えてみたら、普通、ドタキャンされて、横浜から90分かけて吉祥寺の焼肉屋には来ません。でも、こんなちょっと“普通じゃないこと”をするだけでも、僕という人間に対して興味をもっていただくことはできるんです。

 その後、同じ関西出身だったこともあって、オーナーと会話で盛り上がると、「またお店においで。予約は俺に直接でええで」と言っていただけました。予約のできないお店として知られる名店にもかかわらず、僕は、オーナーから「特権」を与えていただけたのです。

 その後、僕は毎週のように知人をつれて、お店に顔を出すようにしました。
 そして、「常連」として親しくさせていただくうちに、オーナーご自身も僕から保険に入ってくださったうえに、ほかの常連さんを次々にご紹介いただけるようになりました。

 しかも、予約の取れないそのお店にお連れすると言うと、なかなかご一緒することのできないような人物とも会食する機会を設けることができます。こうして、僕は、たった一回の“ドタキャン”をきっかけに、劇的に「運気」を上げることができたのです。

おめでたい人ほど「運気」は上がる

 僕は、これと同じような経験をたくさんしてきました。
 もちろん、イヤなことがあったときに、自分を騙しても何も起こらないことのほうが多いのが現実です。でも、そんなときに、腹を立てたり、悪口を言ったり、やけ酒を煽ったりしても、何にもなりません。むしろ、川合さんのおっしゃるように、ただ「運気」を下げるだけだと思います。

 だったら、イヤなことがあったときに、非科学的であっても「これはチャンスなんだ!」と自分に言い聞かせたほうがいい。そして、おめでたくコロッと騙されて、「すごい幸運に恵まれるかも!」などと前向きに頑張ってみる。そういう人には、自然とチャンスが転がり込んでくるでしょう。その意味で、非科学的なことを否定する“賢い人”よりも、おめでたい人のほうが成功する確率は高いと思うのです。

 少なくとも、これだけは言えるでしょう。
 イヤなことが起きたときに、「ついてないな」「運が悪いな」などと暗い顔をしていたら、誰も近寄ってきてはくれません。それよりも、何の根拠がなくても「これはチャンスだ!」と信じ込んで、明るく元気な顔をしていたほうがいい。

 そういう人には、人が近寄ってきてくれる。そして、その人たちが何かしらのチャンスをもたらしてくれるのです。だから、どんなときでも、前向きに自分を騙すことが大切なのです。

(この記事は、『超⭐︎アスリート思考』の一部を抜粋・編集したものです)

金沢景敏(かなざわ・あきとし)
AthReebo株式会社代表取締役、元プルデンシャル生命保険株式会社トップ営業マン
1979年大阪府出身。京都大学でアメリカンフットボール部で活躍し、卒業後はTBSに入社。世界陸上やオリンピック中継、格闘技中継などのディレクターを経験した後、編成としてスポーツを担当。しかし、テレビ局の看板で「自分がエラくなった」と勘違いしている自分自身に疑問を感じ、2012年に退職。完全歩合制の世界で自分を試すべく、プルデンシャル生命に転職した。
プルデンシャル生命保険に転職後、1年目にして個人保険部門で日本一。また3年目には、卓越した生命保険・金融プロフェッショナル組織MDRTの6倍基準である「Top of the Table(TOT)」に到達。最終的には、TOT基準の4倍の成績をあげ、個人の営業マンとして伝説的な数字をつくった。2020年10月、AthReebo(アスリーボ)株式会社を起業。レジェンドアスリートと共に未来のアスリートを応援する社会貢献プロジェクト AthTAG(アスタッグ)を稼働。世界を目指すアスリートに活動応援費を届けるAthTAG GENKIDAMA AWARDも主催。2024年度は活動応援費総額1000万円を世界に挑むアスリートに届けている。著書に、『超★営業思考』『影響力の魔法』(ともにダイヤモンド社)がある。