成長の原動力は3つある

 経済が成長力を高めるためには、どのような条件が必要なのか。これが成長戦略を考えるうえで重要である。成長戦略というと、どうしても個別分野の政策を並べることになりがちだが、マクロ経済の視点が必要だ。

 もちろん、個別の政策なしには、成長戦略も絵に描いた餅になってしまう。個別政策の詳細設計は不可欠である。ただ、マクロ経済全体で見たときに、経済がどのようなメカニズムで成長を実現するのかという視点を常に持つことが重要なのだ。経済成長のマクロ経済的な視点が求められているのだ。

 マクロ経済のサプライサイドから見れば、経済成長を牽引する要因は3つに集約することができる。

 ひとつは「資本や労働などの生産要素を拡大すること」である。安倍内閣の成長戦略では、女性の労働力をもっと活用するという点が強調されているが、これなどは生産要素を拡大する方策の代表的な例である。

 生産年齢人口が急速に縮小するとは言っても、女性や高齢者の労働参加が高まれば、労働力の縮小を相当程度抑えることができる。もちろん、女性の活躍の機会を高めていくことは、労働人口を増やすこと以外にも重要である理由が多くあるのは言うまでもない。

 労働力を拡大していくためには、教育や技術習得の機会を増やして、国民一人ひとりのスキルを向上させていくことも重要である。頭数で見た労働人口が縮小しても、一人ひとりの労働者の能力が高くなれば、全体としては労働力の増加と同じ効果が期待できる。

 経済成長を牽引する第2の要因は、「生産性の低い産業から生産性の高い産業へ資本や労働の移動を促すこと」である。安倍内閣の成長戦略でも、労働移動の問題が注目されている。

 スタンフォード大学の星岳雄教授とシカゴ大学のアニル・カシャップ教授が強調するゾンビ企業の問題も、産業間の要素移動の問題と深く関わっている。本来であれば淘汰される企業が存続していることで、より高い生産性が期待できる新たな企業や産業の発展が阻害されるというのだ。