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給料が増えれば、暮らしは豊かになる――私たちはそう信じがちだ。だが、身近な食材であるシイタケの価格の変遷をたどると、給料と暮らしの関係が決して単純ではないことが見えてくる。なぜ、かつては高級品だったシイタケが、いまでは気軽に買える存在になったのか。そこに隠されているのは、賃金や物価を超えた「本当の豊かさ」の正体だ。本稿では、日常の食卓を手がかりに、私たちの生活が何によって豊かになってきたのかを読み解く。※本稿は、社会的金融教育家の田内 学『お金の不安という幻想 一生働く時代で希望をつかむ8つの視点』(朝日新聞出版)の一部を抜粋・編集したものです。
賃金は上がったが
生活は苦しくなった
仕事は本来、手段であって目的ではない。豊かさとは何か。今改めて、その問いに向き合うときがきている。
生活が豊かになったと実感するわかりやすい瞬間は、給料が増えたときだろう。ただし、物価がそれ以上に上がれば意味はない。2022年頃からようやく給料が増え始めたが、物価高に追いつかず、むしろ生活は苦しくなっている。
しかし、長い目で見ると私たちの暮らしは確実に豊かになった。1920年から2020年の100年間で、食費は2280倍に上昇したが、給料(大卒初任給)はなんと5000倍にも増えた(注1)。
(注1)給料については1920年の大卒銀行員の初任給と2020年の大卒初任給(通勤手当・家族手当を含む)を比較している。また、1920年の価格のうち、給料としょうゆ、天丼、コーヒーは週刊朝日編『値段史年表――明治・大正・昭和』(天丼とコーヒーは1921年のデータ)、シイタケは岡山県山林会編『岡山県林業要覧』、食費は篠原三代平『長期経済統計:推計と分析第6』、白米は日本統計協会編『日本長期統計総覧 第4巻』を参照している。また、2020年の価格のうち、給料は厚生労働省「賃金構造基本統計調査」、食費は総務省統計局「家計調査年報」、それ以外の品目は総務省統計局「小売物価統計調査」を参照している。







