少年院で保護者が「面会ドタキャン」、傷つく少年たちを守るための“優しい秘策”『ケーキの切れない非行少年たち』(c)宮口幸治 鈴木マサカズ/新潮社

児童精神科医による大ヒット書籍のコミカライズ版として、くらげバンチ(新潮社)で連載されている(原作/宮口幸治、漫画/鈴木マサカズ)。今回は、第7話から、原作の立命館大学教授で児童精神科医の宮口幸治氏が漫画に描けなかったエピソードを紹介する。

少年院で「保護者の面会」の伝え方

 今回のマンガに登場する門倉恭子(仮名)は妊娠8カ月で少年院に入りました。出産を無事に終えた恭子は、生後数カ月の娘・愛菜を近隣に住む母親に預け、残りの在院期間を少年院で過ごします。そこに恭子の母親が愛菜を連れて面会に訪れるようになります。

 少年院では保護者などの面会が認められています。面会人は原則として家族や学校関係者、職場関係者、弁護人などに限られ弁護人以外は職員立ち合いのもとで行われます。頻度は少年によって差がありますが、保護者の場合、月に1回程度、面会に来られます。

 面会時間は30分程度ですが、社会では親の言うことを聞かず、ずっと迷惑をかけてきたのに、自分を見捨てずに遠方から面会に来続けてくれる――。そんな親の姿を見て、少年たちは初めて親のありがたみを実感し「もう親を悲しませたくない」と誓うのです。

 ただ保護者もさまざまで面会予約をしても当日、ドタキャンすることあります。そのため、ショックを与えないように少年たちには、実際に保護者が来院してから面会のあることを告げられます。

 面会があると大抵の少年たちは喜びますが、恭子は母の面会があるといつも憂鬱です。なぜなら恭子は子どもの頃から、障害をもつ弟・翔明への母の暴力を目撃してきたからです。

 愛菜を連れて面会に来た母は、面会室で泣き止まない愛菜に「泣くなっ!!」と怒鳴ります。そんな母の姿を見て、恭子は過去の記憶が蘇ってしまい、面会後パニック状態に陥ってしまうのでした。

 ここでも恭子の境界知能という特性が不利に働いてしまいます。マンガの中ではその理由を「対処能力の問題」と説明しています。何か困ったことが起こったとき、しっかり道筋を立てて考える力があれば、何とかその困難を乗り越えることができるのです。しかし精神科医の六麦は「知的なハンディがあって考えることが苦手だとどうしていいか分からなくなってしまう」といいます。

 恭子は境界知能のために考えることが苦手でした。そのため母親の面会で不快な記憶を想起され、そのたびにどうしていいのか分からずパニックを起こしてしまうのでした。

 パニックになって居室の壁を殴り、たびたび保護室に入れられる恭子。このような状況は愛菜が生後6カ月になって保育所に入所し、母がパート勤務に戻るまで続きました。

 そして恭子は17歳になって、ついに出院します。入院した時は15歳。通常であれば楽しい時期であるはずの高校生年代を恭子は少年院で過ごしたのです。

 原作者である宮口幸治は、児童精神科医として、実際に医療少年院の勤務歴があります。その経験から書いた『ケーキの切れない非行少年たち』(新潮新書)をマンガ化した作品。マンガの続きは「ケーキの切れない非行少年たち」でチェック!

『ケーキの切れない非行少年たち』(c)宮口幸治 鈴木マサカズ/新潮社『ケーキの切れない非行少年たち』(c)宮口幸治 鈴木マサカズ/新潮社
『ケーキの切れない非行少年たち』(c)宮口幸治 鈴木マサカズ/新潮社『ケーキの切れない非行少年たち』(c)宮口幸治 鈴木マサカズ/新潮社