また私はジャズ歌手でもありますが、25歳頃まで歌手活動をしてきたものの、医学の道に専念するために辞め、40代後半で再び歌い始めました。ですからこちらも再開した時は、「自分が一番できない」という思いでいっぱいでした。

 でも、これって全然悪いことではないんですよ。

不安になる心理現象があるから
人一倍努力する

 インポスター現象は「病気」ではなく、あくまで心理的な「現象」です。そしてそういった不安な心理現象があるから、それを補充しようとして人一倍、勉強したり練習したりするでしょう。

 私も自分が一番物を知らないんだと必死に勉強を続けると、結局自分が一番詳しくなったという、びっくりするような体験をしています(笑)。不安になったら、むしろそれを“自分の強み”として利用してほしい。

 けれどもどんなに努力を重ねても、不安や心配が膨れ上がってしまう時――。それは不安神経症のように行きすぎた状態ですから、ある程度自分なりに頑張ったら、そこで「不安になることをやめる」こと。

「インポスター現象だ」と気づくこと
「自分を評価してくれる人」を持つこと

 その“ある程度”がわからないんだよ、と思う人もいるかもしれません。大切なことは二つです。ひとつは、どんなに仕事に取り組んでも不安な気持ちが頭から離れなかったら「インポスター現象ではないか」と気づくこと。気づくことで客観的な目で自分を捉えられますから、インポスター現象から抜け出すことができます。

 もうひとつは、「自分を評価してくれる人」をもつということ。もちろん誰でもいいわけではなく、忖度(そんたく)せず、かつ自分が安心して評価を受けられる人がいいですね。

 私にはジャズで、自分を評価してくれるピアニストの人がいます。気に入らないことがあればはっきり言ってくれる人なので、この人が「いいじゃない!」と言ってくれたら、ほかの人の意見を聞かなくても自分にOKを出せる。信じられるのです。

 仕事でも同じです。評価してくれる人を見つけましょう。

 ビジネスでは誰しも忖度してしまうって? そんなことはありません。相手が自分の気持ちを推し量って評価しているのではないかと思ってしまうのは、自分が人に忖度したことを言っているからではないでしょうか。自分の心にある「忖度(そんたく)度」を低くする、つまり“真実”を口にしていくと、同じ視点の人を見つけやすくなると思います。

 安心して自分を評価してくれる人を見つける、不安が不安を呼んで気持ちが休まらなくなったらインポスター現象と気づく。はた目には業績を上げて出世をしても、心が落ち着かないのなら、その二点を心がけましょう。

「部下を潰してしまう上司」の
共通点とは?

 そしてこれまでリーダーシップの経験がない人が出世して、初めて部下を持ったとしても、気にしなくて大丈夫。誰だって「初めて」の時はありますし、徐々にその立場に慣れていくと思います。

 ただし、これまで産業医として数多くのビジネスパーソンに関わってきて、「部下を潰(つぶ)してしまう上司」には共通点があると感じています。