普通のなんでもない平穏な日常を描こうと思った時に「で、オチは?」と言われてしまうんじゃないかという、関西的なノリであり、呪いが自分の中にあったんです。
面白くないと思われたら、もう2度と読んでもらえなくなるんじゃないかと思い込んでいました。
でも、そんな話を中山さんにすると「オチがないと、どうなるんですか?」と聞いてくれて、ぼくはいろんなことを想像して黙っていると、中山さんは続けてアドバイスをくれました。
「1回、描いてみるといいですよ」と。
ちょっとビビりながら、オチのない漫画を描いてSNSにアップしてみることに。いつもより反応は少なかったものの「オチは?」とツッコんでくる人はいない。
それよりもぼくの中で、そういう話を描いても読んでくれる人がいることが嬉しくて、身体から呪いが消えた気がしました。
作家の悩みに向き合うのも
編集者の大事な役割
今まで上司や先輩に仕事の悩みなどを聞いてもらった時(業務的な相談はできたんです)の「大丈夫、大丈夫!」というなんの確証もない励ましに、いつも「無責任な言葉だな」と思っていました。本当に大丈夫なこともあったかもしれないけど、心から安心を感じられたことがなかったからです。
でも、中山さんに言われて、実際にやってみて「あ、大丈夫かも」って思えたことで、心から安心できました。
もしかしたら「面白くない」と離れてしまった人がいたかもしれないけど、ぼくには見えなかった。それよりも読んでくれる人がいたという嬉しさと、大丈夫だったという安心感を得られたことの方が、大きかった。
それからは「やってみたいけど、こわい」ということを「1回、小さく試してみる」ようにしています。
同書より転載
あの時、やけくそだったかもしれないけど「中山さんに話してみた」ことで、自分の話を真っ直ぐに聞いてくれる人がいるんだなと感じることができて、今では相談できる人は増えました。
もちろん数人ですし、人によって話せること話せないことはあるものの、「いざとなった時に話を聞いてくれる人がこの世界にいる」って思えるだけで、心強く、寂しさは薄れ、生きるのが少し楽になるんじゃないかなと思っています。
『「漫画家やめたい」と追い込まれた心が雑談で救われていく1年間』(吉本ユータヌキ、集英社インターナショナル)







