黒字化に成功!阪急百貨店が展開するネットスーパー

 そのような状況下で、ネットスーパーの黒字化事例として知られるのが、阪急百貨店が展開したキッチンエールだ。

 同社は、2002年から京阪神エリアで宅配事業を開始、センターを設立し、1カ所から夜間ピッキングにより24時間以内配送、高齢者向けの御用聞き電話サービスなど、当時としては先進的なオペレーションを構築した。

 2010年時点では、会員数は約3万8000人。配送効率と買上点数のバランスを取ることで、数少ない黒字モデルを実現していたのだ。

 また、70歳以上の高齢者を対象とした「御用聞き電話サービス」(決められた曜日・時刻に阪急キッチンエールから御用聞きの電話をするサービス)を行っていた。

 3つの温度帯(常温・冷蔵・冷凍)で提供し、24時までに注文をした場合は、翌日の17時までに配達。また当日の15時までに注文すれば、21時までに到着するクイックサービスもなされていた。

 1人当たりの買い上げ単価も高く、約5000円 。京阪神エリアの比較的高年収層をターゲットにしたことで、高粗利商品の購入が見込め、ネットスーパーが陥りやすい配送コストも粗利で吸収できる仕組みを構築できた。

「○○円以上で送料無料」が経営を圧迫する

 ただ、ネットスーパーの難しさは、粗利の少ない商品を小刻みに注文されると、配送コストが一気に重くのしかかる点にある。

 「○○円以上で送料無料」という仕組みは一見便利だが、粗利の薄い商品を送料無料ラインぎりぎりで注文されると、配送1回あたりのコストが粗利を上回り、利益が吹き飛んでしまう。これは理論ではなく、現場で実際に起きている“構造的な事実”である。

 薄氷の粗利で価格訴求を徹底するEDLP(Everyday Low Price)業態にとって、ネットスーパーは極めて相性が悪いのだ。

 EDLPは粗利率が低く設定されているため、配送コストを吸収する余地がほとんどない。 そのため、注文頻度が増えるほど赤字が積み上がる構造になりやすい。

 この視点から見ると、2022年にコスモス薬品がネットスーパー事業から撤退した理由の一端も、この粗利構造にあると考えられる。 同社は徹底したEDLP戦略で成長してきた企業であり、粗利を配送コストで相殺してしまうネットスーパーとは、根本的に相性が悪かった可能性が高い。