地面師詐欺における
各メンバーの役割分担

 ドラマのモデルになった積水ハウス事件に象徴される地面師詐欺では、まさに映画のワンシーンのような場面が繰り広げられてきた。わけても秋葉紘子は犯行における重要な役どころを演じている。ニセ地主のなりすまし役を犯行グループに引き入れる手配師である。

 その秋葉に旅館の持ち主、海老澤佐妃子のなりすましとしてスカウトされたのが、生保レディだった羽毛田だ。地主のなりすまし役は詐欺を演じ、手配師は主役のキャスティングを担う。ドラマの俳優でいえば、小池栄子が手配師となりすまし役の両方を演じている。

 積水ハウス事件における本物の手配師だった秋葉は、「池袋の女芸能プロダクション社長」の異名をとってきた斯界の有名人だ。

 現実のなりすまし役は、不動産業界で悪名が轟いている詐欺師だと取引現場で正体がばれてしまう恐れがある。そのため、地面師詐欺を計画する首謀者は、たいがい素人をスカウトする。芸能の世界にたとえていえば、新人発掘オーディションみたいなものだろうか。詐欺の現場では、主演のなりすまし役が新人の素人なので、それをサポートする立場のわき役の演技力も欠かせない。積水ハウス事件では、内田が詐欺の素人である羽毛田の補佐役として、常世田に「前野」と名乗らせ、内縁の夫として取引現場に送り込んでいた。

 その他の役割を記すと、イクタホールディングス会長の生田とその愛人で社長を務めた近藤が地主と積水ハウスとの間に入る中間業者、佐々木や三木は地主のニセ振込口座づくりを担い、佐藤は羽毛田の運転手を務めた。小林は指定暴力団住吉会の重鎮だった小林楠扶の息子であり、不動産会社を経営し、買い手を探す役割だったという。また、永田は全体の連絡調整役を務めた。

 事件現場の海喜館には大物地面師が勢ぞろいといった感がある。事件当時、60歳前後だった犯行グループの彼らは、詐欺師として円熟の境地に達していたともいえる。逮捕から七年以上経過した今は多くがすでに70歳から80歳に達しているが、そのなかでもカミンスカスはまだ60代半ば、と若手の部類に入る。当人から届いた2通目の手紙は、こう結ばれていた。

〈“地面師 6年目の真実 白昼の死角”(中略)私は私のわかる事は何でも答えます。手紙待っています。宜しくお願いします〉(2024年8月8日消印書簡)