追い込まれて気づいた「幸せの正体」

 そんなとき、通っていたアナウンサー学校でフリートークの課題が出た。テーマは「幸せとは何か」。

 夢に破れかけている自分が、幸せについて語る。皮肉な状況だったが、このテーマと真剣に向き合ったことで、私の考えは整理された。

 絶望の中で見つけた幸せの定義は、「自分の選択に納得できているかどうか」だった。

 大学1~2年生の頃、友人たちは会社員ではない夢を語っていた。「デザイナーになりたい」「起業したい」――しかし就活が始まると、みんなそんな夢を忘れたかのように一斉に企業を受け始めた。当時の私は理解できなかった。「なぜ夢を追わないのか」と。

 しかし、自分自身に無職という現実が迫ったとき、初めて後悔が生まれた。「一般企業の就活をしておけばよかった」と。

 そこで初めて、夢を追わずに就職を選んだ友人たちの気持ちがわかった。彼らはリスクやリターン、自分の情熱を見極めて一般企業を選んでいた。そして、その選択に納得していた友人らは幸せそうに見えた。

「保険」を持った途端、人生が動き出した

 夢が叶ったかどうかではない。納得できているかどうか。それが幸せを決める――。この気づきから、私は自分の大きな失敗を認めることになった。長い期間、夢が叶わない可能性を全く考えていなかったのだ。

 アナウンサーにはなりたい。しかし、大学卒業後に無職で社会に放り出されてもいい、という覚悟はなかった。そんな微妙な覚悟だからこそ追い込まれ、焦っていたのだ。

 夢が叶わないことに恐怖を感じる自分には、「保険」と「期限」が必要だった。

 大学5年目の年明け、私はIT企業の営業職を受け、内定をもらった。そして期限を決めた。卒業までの残り3カ月はアナウンサー試験を続ける。社会人になっても続けるか、そこで区切りをつけるかは、その時の自分に委ねよう、と。