love seatという語を知らなかったのか、あるいは love=愛という言葉のニュアンスが欧米ほどおおらかではなかった当時の日本では、社会から誤解を招きやすい用語だと判断したのかもしれない。

 ロマンスカーを最初に鉄道車両に導入したのは1927(昭和2)年、関西の京阪電鉄である。大阪と京都を結ぶ特急電車にロングシートではなく、2人がけのクロスシートを採用したのだが、男女が一緒に座ると恋が生まれそうという発想から「ロマンス」の言葉を用いたとのこと。

「グリーン車」「ロマンスカー」はNG?外国人に通じない鉄道英語の落とし穴『鉄道で親しむ英語』野田隆(交通新聞社)

 もっとも、当時の表記は「ローマンスカー」だった。1960(昭和35)年には、「テレビ付ロマンスカー京阪特急40分」という見出しの新聞広告が掲出されている。

 戦後、首都圏でも東武鉄道にDRCという特急電車があり、これはDeluxe Romance Carの略語だったし、長野電鉄の2000系電車がロマンスカーとしてPRされるなど、2人掛けシートを採用した特急車両の意味で使用する風潮があった。

 だが、いずれにしても完全な和製英語なので、外国人には全く通用しない。箱根や江の島へ向かう行楽特急電車の愛称だと説明すれば、不思議な表情をしながらも分かってもらえるであろう。小田急電鉄の公式サイトの英文では、
   
The Romancecar is an Odakyu limited express train with reserved seating only.
【訳】 ロマンスカーとは、全席指定の小田急の特急列車です

と説明されている。