「どうしてあの人が出世するの?」――職場で一度は抱いたことのある疑問だろう。実力よりもポジションだけが先行し、部下を振り回す上司。まるで知ったような口をきく上司に、疲弊している人も少なくない。“人生の指針”を示してくれる新刊『人生は期待ゼロがうまくいく』(著:キム・ダスル、訳:岡崎暢子)の発売を記念した本稿では、ライターの柴田賢三氏に「知ったかぶり上司」が招く悲劇についてのエッセイをご寄稿いただいた。(企画:ダイヤモンド社書籍編集局)
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「なんでこの人が…?」
ちゃっかり出世した上司
会社には「なんでこの人が評価されているのかわからない」という上司がいる。
花形の部署を経験することもなく、会社に利益を与えたこともないのに、いつの間にか出世しているタイプの人間だ。
こういう人が上司になると最悪なのは言うまでもない。有能な部下たちを振り回して疲弊させ、自分のミスを取り返す手段や人脈すら持っていない。
彼らは「知ったかぶり」をする。そうしないと自分が無能であることがバレてしまうからだ。
私が某週刊誌にいたときの編集長が、このタイプの上司だった。週刊誌の花形はトップ記事を書ける取材力や文章力、あらゆる業界にコネクションを持つ記者たちだが、この編集長は記者経験がなく、グラビアや連載記事しか担当したことがない人だった。
通常、記者経験のない人物は週刊誌の編集長にはなれない。
タイトルや見出し、記事の1行で訴訟を起こされる恐れがある世界だが、記者はそのギリギリのラインを攻めてセンセーショナルな記事を書く。そうした記者たちの気持ちも理解した上で、訴訟リスクを見極めて掲載する記事のさじ加減を最終決定するのが編集長だからである。
当然ながら、この編集長は記者たちから嫌われていた。編集長のほうも、「記者は経費を湯水のように使うくせに部数に貢献しない。有名なアイドルのグラビアに力を入れたほうがよっぽどマシだ」などと若手編集者に酒場で愚痴を言っていたそうだ。



