1歳の女の子が虐待で乳児院→3年後に笑顔が戻ったワケ…20歳の母の壮絶な戦い【マンガ】『ケーキの切れない非行少年たち』(c)宮口幸治 鈴木マサカズ/新潮社

児童精神科医による大ヒット書籍のコミカライズ版として、くらげバンチ(新潮社)で連載されている(原作/宮口幸治、漫画/鈴木マサカズ)。今回は、第8話「母と娘」から、原作の立命館大学教授で児童精神科医の宮口幸治氏が漫画に描けなかったエピソードを紹介する。

母から娘、そして孫娘に続いた虐待の連鎖

 17歳になった門倉恭子(仮名)は、女子少年院を出院します。

 恭子は15歳のとき、傷害事件を起こして少年院に入りましたが、その時すでに妊娠しており、少年院で娘の愛菜を出産しました。

 出院した時、愛菜は1歳になっていました。恭子は「これからは普通の生活を取り戻したい」と願います。しかし、保育所に預けていた愛菜を、恭子の母(愛菜の祖母)と一緒に迎えに行ったとき、厳しい現実に直面します。

 愛菜は、恭子ではなく祖母を母親だと思っており、恭子の方には寄ってきません。その後の生活でも、愛菜は恭子になつかず、恭子は強い戸惑いや不安を感じるようになります。やがて、そのつらさは愛菜への虐待という形で表れていきます。

 少年院に入っている少年たちの約半数は、過去に保護者から虐待を受けた経験があると言われています。男子では身体的虐待が多く、女子では身体的・心理的・性的虐待など、さまざまな形の虐待が報告されています。

 心理的虐待には、直接の暴言だけでなく、子どもの前で家庭内暴力を行う、怒鳴り散らすといった行為も含まれます。心理的虐待は外から分かりにくい一方で、子どもの自尊心や感情の発達に深刻な影響を与え、将来、うつ病や対人関係の問題、非行などにつながることもあります。

 恭子自身も、障害のある弟・翔命に対する母の暴力を目の当たりにしながら育ち、心理的虐待を受けてきました。その影響で感情をうまくコントロールできず、傷害事件を起こしてしまったのです。

 そして今度は、その暴力の連鎖が娘の愛菜へと向かいます。さらに、愛菜は祖母からも些細なことで身体的暴力を受けるようになります。しかし恭子は、母の前では何も言えません。その結果、保育所で虐待に気づかれ、児童相談所に通報されます。

 愛菜は乳児院に保護されることになりました。乳児院は、家庭で育てることが難しい乳幼児を預かり、育てる児童福祉施設です。入所している子どもの約3割に被虐待の経験があると言われています。

 恭子は、乳児院に通いながら、NPO団体が行う「親子再統合プログラム」に参加します。子どもを保護するだけでは、その後の問題は解決しません。多くの場合、いずれは子どもを親のもとへ戻す必要があります。そのためには、親自身が子育てを学び直すことが大切なのです。

 恭子は、子どもの泣き方や行動の意味をどう受け取るかなどを、スタッフと一緒に学んでいきます。乳児院に通い始めて1年後、愛菜は家に戻ることができました。

 母の態度は変わりませんでしたが、恭子はプログラムで学んだことを生かし、自信をもって愛菜を育てていきます。そして20歳になった恭子は、母から離れ、愛菜と2人で暮らすことを決意したのです。

 原作者である宮口幸治は、児童精神科医として、実際に医療少年院の勤務歴があります。その経験から書いた『ケーキの切れない非行少年たち』(新潮新書)をマンガ化した作品。マンガの続きは「ケーキの切れない非行少年たち」でチェック!

『ケーキの切れない非行少年たち』(c)宮口幸治 鈴木マサカズ/新潮社『ケーキの切れない非行少年たち』(c)宮口幸治 鈴木マサカズ/新潮社
『ケーキの切れない非行少年たち』(c)宮口幸治 鈴木マサカズ/新潮社『ケーキの切れない非行少年たち』(c)宮口幸治 鈴木マサカズ/新潮社