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人間は生まれながらに身近な人を大切にする性質を備えている。しかしその仲間意識は、ときに外部の人を排除する力にもなりうる。分断が広がる現代社会において、誰もが差別や偏見を受けない人間関係を構築するにはどうすればいいのか。哲学者2人の対話から、その手がかりを探る。※本稿は、ボン大学教授のマルクス・ガブリエル、京都大学教授の出口康夫『これからの社会のために哲学ができること 新道徳実在論とWEターン』(光文社)の一部を抜粋・編集したものです。
道徳教育をおろそかにした子どもは
排他的な人間に成長する
――お2人とも人間には本質的に善良な部分があるという信念を持ち、特に次世代に対して大きな期待を寄せていらっしゃいますね。最新の発達心理学の研究によれば、子どもは生まれつき利他性を備えているそうです。お2人もまた、子どもは生まれつき道徳心を持ち、善良な人間に成長する大きな可能性があるという見解を共有していると感じます。これは、子どもたちが善い「WE」(編集部注/「われわれ」のこと)になる期待ができるということでしょうか?
出口康夫(以下、出口):「WE」には2つのタイプがあります。1つは「野生のWE」、もう1つが「飼い慣らされたWE」です。
進化のメカニズムを経ることで、人間には生まれつき一定の共同体意識が備わっていると言われていますが、この意識には「内集団バイアス」と呼ばれる認知の偏りが伴っているともされています。
例えば、私たちは、家族、親戚、友人、同郷人など、なんらかの意味で「自分と同じグループ」に属する他者を、そうでない人々に比べ、何の根拠もないまま、ついつい高く評価してしまい優遇してしまうというバイアスを抱えています。それが、ここで言う「内集団バイアス」なのです。







