「完全なフィクション」でもない理由

 とはいえ、このエピソードが完全にフィクションというわけではありません。美濃攻めの過程で墨俣付近に前線拠点が整備された可能性は高く、秀吉が何らかの役割を果たしたことも否定できないからです。ただ、立派な城を一夜で築いたという劇的な物語は、後世の創作の産物と考えるのが現在の通説です。

 歴史を学ぶ面白さは、こうした「伝説の生まれ方」をたどるところにもあります。墨俣一夜城は、秀吉の知恵や機転を象徴する物語として語り継がれながら、同時に史料批判の大切さを教えてくれる好例なのです。

秀吉は、寧寧(演:浜辺美波)と祝言を挙げる (C)NHK秀吉は、寧寧(演:浜辺美波)と祝言を挙げる (C)NHK
一方、直(右、演:白石聖)は、秀長(左、演:仲野太賀)と別れて「中村へ帰る」と言い出すが……(C)NHK一方、直(右、演:白石聖)は、秀長(左、演:仲野太賀)と別れて「中村へ帰る」と言い出すが……(C)NHK

次ページの動画ではこの他、
 ・昭和に現れた新史料 『武功夜話』とは何か
 ・出版当時の大反響 信長公記級と期待された理由
 ・『武功夜話』が語る墨俣一夜城エピソード
 ・現在の評価と偽書説

などについてお話しています。気になった方は、動画をご覧ください。