木本 創業当初、さまざまな可能性を探索している段階で一番嫌だったのはチャンス・ロスです。素晴らしいテクノロジーがあって、最初は物になるか分からない。ところが年数がたってから「特許を取っておけばよかった」と後悔するのはもったいない。

 だから何が物になるか分からないフェーズでは、できるだけ特許を取って、守って戦える体制を作っておく、という考え方に寄っていきました。

 しかし次のフェーズに入り、商品群が立ち上がって事業化ができてくると、研究開発だけじゃなく設備投資や生産にもコストがかかる。

 そうなると、リソース配分も変えなければなりません。特許は“安心材料”になるから出願したくなるが、そのためにリソースを使い過ぎると、成長のスピードを失う。判断を誤れば、競争優位どころか、機会を逃してしまう。それに気付いたことで、より経営戦略のレイヤーで知財を考えるようになりました。

持続的な競争優位性や
参入障壁は特許だけじゃない

――事業のフェーズによって知財戦略も変える必要があるということですね。

村上 持続的な競争優位性や参入障壁は特許だけじゃない、ということです。事業特性に応じてフラットに考えています。特許を重視するものもあれば、アルゴリズムの秘匿を重視するものもあるし、ビジネス構造で参入障壁を作ることを重視するものもある。ものによって使い分けています。

 もう一つ重要なことは、技術や知財を重要視しつつも、守り過ぎないことです。先ほども話に上りましたが、私たちはオープン・イノベーション型でパートナー企業と組むことが多い。

 守りを細かくやり過ぎると、パートナーシップ自体が成り立たなくなる。まだ小さい会社だからこそ、いろいろな会社と組んで大きなテコをかけ、社会に出せる価値を大きくする判断も大切にしています。

――最後にお伺いです。23年8月にNASDAQに上場しましたが、24年11月に上場廃止しています。今後、再上場は考えられていますか?

村上 もちろん目指しています。当時は事業継続性の観点からやむなく上場廃止を決断しましたが、今後会社として大きな製品を世に出していく際に資金調達も必要となる可能性もありますから、タイミングを見て資本市場のお力添えをいただきたいと考えています。