物理的な距離は同じだが
心理的に遠ざけることに成功

 私は、人間関係でストレスを抱えているクライアントには、苦手な人の声を変えてもらい、さらに実況中継しながら解像度を下げ、遠ざけ、最終的に宇宙の果てまで飛ばしてもらっています。必要なときには、さらに深いワークを行って、本当に見えない、自分には影響を及ぼせない存在となるまで、イメージをニュートラルなものにしていきます。

 たとえば、ある金融機関で働く女性(32歳)は、威圧的な先輩に悩んでいました。

 最初に相談にみえたとき、彼女は、「職場でいつもその先輩に監視されているような感覚で、デスクに座っているだけで肩が凝っていたんですが、そのうち、先輩がいないときでも、先輩が近くにいるような感じがして、気が休まらなくなってしまったんです」と嘆いていました。

 そんな彼女に、私はフェードアウト法のやり方をお伝えしました。

 最初は半信半疑だった彼女ですが、数日後、「先輩を女性アイドルの声にして、豆粒にしてロケットで飛ばしたら、なんだか急におかしくなって。翌日会社で会っても、『あ、豆粒の人だ』と思ったら、前みたいに緊張しなくなりました。物理的な距離は同じなのに、心理的にすごく遠くなった感じです」と明るい顔で報告してくれました。

 これが、感覚モダリティを利用した、フェードアウト法の効果です。

相手の解像度を低くし
実況中継してみる

 もちろん、相手はまったく変わっていません。でも、脳内での相手の存在感が薄まり、心理的距離が広がったことで、扁桃体が反応しなくなり、ストレッサーとしての力を失っていくのです。

 今回の方法は入門編ですが、「1回で、相手のことが気にならなくなった」という人もいれば、「数回繰り返したら、相手が脳内から消えた」という人、「自分では効果に気づかなくても、実際に会ってみたら、相手の印象が変わっていた」という人もいます。いずれにせよ、フェードアウト法を実践すると、扁桃体が反応しにくくなり、相手は「小さな存在」として脳に新たに認知されやすくなります。

 この方法は、すでに抱えている苦手な人の記憶をリセットするだけでなく、日々の小さなストレスを軽くするうえでも役立ちます。

 ぜひあなたも、人間関係のストレスを感じたら、「フェードアウト法で、相手の解像度を低くし、実況中継してみる」ことを習慣にしてみてください。

 会社で嫌なことがあったら、家に帰り着く前に、相手の声を変えて宇宙に飛ばす。

 海馬に「恐怖」や「嫌なイメージ」が長期記憶として定着する前に遠ざけてしまえば、ストレスを家に持ち帰らなくてすみます。