(1)言い間違い
「あっ、ちがう…」
話している途中で「あっ、ちがう」「いや、違います」と言い直しが続くと、内容以前に落ち着きのなさが前に出てしまいます。
法廷証言を題材にした研究でも、言いよどみや言い直しを含む「パワーレス(powerless)な話し方」は、話者の信用性を下げやすいことが示されています(※1)。ポイントは、間違いそのものよりも、訂正が連続して話が細切れになることです。
とはいえ、人は誰でも言い間違えます。大事なのは「直し方」です。言い直したくなったら、慌てて言葉を重ねるのではなく、一拍置いて短く言い切ったうえで、訂正する方法はどうでしょう。
たとえば「私が見たのは、あっ、ちがう、聞いたのは…」ではなく、「失礼しました。私が聞いたのは〜です。」のように、文章で訂正するのです。間違いではないものの表現を修正したい場合は「正確には〜です」「言い換えると〜です」と一文で修正すると自然な印象を与えることができます。
(2)ためらい表現
「えっと…」
言葉がすぐ出てこないとき、私たちは沈黙を埋めたくなって「えっと」「あのー」「うーん」を挟みがちです。
これらは、ためらい表現として知られ、説得におけるコミュニケーションの研究では、ためらいを含む話し方は「自信の弱さ」や「弱い立場」を連想させやすい要素として扱われています(※2)。つまり、内容が同じでも、言い方が「頼りない人」に見せてしまうことがあるのです。
ただし、ゼロにする必要はありません。目標は「なくす」ではなく「減らす」、そして「要所で出さない」です。
特に冒頭、結論、数字、条件提示の前に「えっと…」が入ると、話全体が急に弱く見えます。口に出そうになったら、短く息を吸って一拍置き、その代わりに意味のある橋渡しの言葉を置くと自然です。
たとえば「えっと…」の代わりに「結論から言うと〜です」「ポイントは2つあります」「少し整理しますね」と言えるだけで、聞き手の安心感が変わります。
(3)付加疑問文
「~だと思いません?」
「〜ですよね?」「〜だと思いません?」を会話のたびに添えると、聞き手は「同意がないと不安なのかな」「自信がないのかな」と受け取ることがあります。
付加疑問は研究上も、パワーレス話法の目印の一つとして扱われています(※2)。要するに、内容以上に弱く見えてしまうのです。
ただし、付加疑問そのものが悪いわけではありません。合意形成が必要な会議や、相手の理解確認が必要な場面では、有効に働く場面もあります。
問題は、確認したい目的がないのに、語尾の癖として付けてしまうことです。癖を直すには、「同意を求める」か「確認する」か「意見を募る」か、目的に合わせて文を作り替えるのが近道です。
(4)推測表現
「たぶん」
「たぶん」や「おそらく」を多用すると、話の芯がぼやけて聞こえます。法廷証言を模した古典的研究でも、ヘッジ(ぼかし)やためらいなどを多く含む“パワーレス話法”は、話者の魅力度や信用度を下げやすいことが示されています(※3)。
ここで注意したいのは、「たぶん」単独が悪いというより、曖昧さが積み重なって“頼りなさ”として見えてしまう点です。
だからといって、無理に断言すればいいわけではありません。ここは「弱さ」を消すのではなく、「曖昧さを整理して誠実さに変える」のが正解です。
たとえば「たぶん売れます」ではなく、「現時点のデータでは売れる可能性が高いです」「条件が揃えば売れます。条件はAとBです」「結論としては賛成です。ただし懸念点が一つあります」のように、根拠・条件・留保をセットで示します。
こうすると、「弱い人」ではなく「慎重で信頼できる人」として受け取られやすくなるでしょう。
(5)セルフハンディキャッピング
「未経験なので…」
「昨日は全然勉強していないから、たぶんダメだ」――試験前にこう言って予防線を張る人を見たことがあるかもしれません。このように、行動する前に言い訳する行為は、心理学でセルフハンディキャッピングと呼ばれます。
仕事でも同じで、プロジェクトが始まる前から「未経験なので」と言い続けると、周囲には「責任から逃げたいのかな」と映るだけでしょう。本人は防御しているつもりでも、聞かされる側は「未経験なんですね…それで?」と思うはずです。
実際、社会人246名を対象にした研究では、セルフハンディキャップは信用性などの印象を下げやすく、特に繰り返される「自己ハンディ」は最も信用されにくい傾向が示されています(※4)。
つまり、先に言い訳を置くほど「身を守れる」どころか、評価が下がりやすいのです。
ここで誤解しないでほしいのは、「未経験を隠せ」という話ではないことです。
誠実に伝えるべき情報はあります。違いは、言い方が“言い訳”になっているか、“計画”になっているかです。
「未経験ですが、最初の2週間でここまでキャッチアップします」「経験は浅いですが、関連領域ではこの実績があります」「サポートが必要なのはAの部分で、Bは自走できます」と、行動計画に変換します。
これなら同じ未経験でも、印象は「頼りない人」から「段取りができる人」に変わります。
今回取り上げたのは、露骨な暴言ではなく、普通の人が無自覚に使ってしまいがちな言い方です。
言い直し、ためらい、付加疑問、推測の連発、セルフハンディキャップ――これらは内容の正しさとは別に、話した後の印象だけを先に落としてしまうことがあります。
逆に言えば、言葉を少し整えるだけで、同じ能力でも「信用できる人」「落ち着いた人」「一緒に仕事がしやすい人」と見られやすくなります。
頭のいい人は、話す前に“話した後にどう見えるか”を考えています。今日からは一つだけでも、口癖を置き換えてみてください。言葉が変わると、相手の反応が変わり、結果的に自分の評価も変わっていきます。
※1 Ruva, C. L., & Bryant, J. B. (2004). The impact of age, speech style, and question form on perceptions of witness credibility and trial outcome. Journal of Applied Social Psychology, 34, 1919–1944.
※2 Sparks, J. R., & Areni, C. S. (2008). Style versus substance: Multiple roles of language power in persuasion. Journal of Applied Social Psychology, 38, 37–60.
※3 Erickson, B., Lind, E. A., Johnson, B. C., & O’Barr, W. M. (1978). Speech style and impression formation in a court setting: The effects of powerful and powerless speech. Journal of Experimental Social Psychology*, 14, 266–279.
※4 McElroy, J. C., & Crant, J. M. (2008). Handicapping: The effect of its source and frequency. Journal of Applied Psychology*, 93, 893–900.







