後日、嘘の開始時刻を伝えられていたことを告げられたサトコさんは言いました。「いやー、ほんとに助かりました。私をよくわかってくださっています。正直に言って本当は13:30からと告げられていたら、私は13:40にしか到着できなかったと思います」。

 上司は嘘はつきたくなかったものの、一大事に至らずホッとしました。

 こうした足場を組むことで、甘やかすのでは、クセになるのではと心配する上司もいますが、徐々に本人の時間管理スキルを成長させていけば、最小限の足場ですむようになるでしょう。また、職場のみながお互いの足場になれるような体制を構築していけるといいですね。

先延ばし癖のある部下には
タスクを因数分解してあげる

 さてここで、「期限ギリギリなのになぜか他人事で焦る素振りがない」社員に対して、管理職として「リマインド」「足場づくり」を用いた方法で解決する例を見ましょう。

 会社員のスズキさんは、いつも締め切りの直前になっても焦る様子を見せません。まるで他人事のような表情で、「なんとかなると思ってます」と口にします。周囲が忙しく手を動かしている中でも、彼だけが静かにパソコンの前に座り、思考が止まっているように見えることがあります。

 しかし、これは決して怠慢ではありません。スズキさんは認知的回避に陥っているのです。つまり、「タスクがあまりに難しく、自分には手に負えない」と無意識に感じており、向き合うことそのものを避けている状態です。焦りが見えないのは、現実を直視しないことで自分を守ろうとする防衛反応なのです。

 上司は、スズキさんを叱責したり追い立てるのではなく、「一緒に取り組む」姿勢を選びました。

 まず、スズキさんが抱えている課題を細かく分解し、どの部分が重く感じられているのかを一緒に整理したのです。よくよく話を聞くと、彼はタスク全体を“巨大な山”のように捉えていたようです。

「正直に言って、どこから手をつけていいのかわからなくて、しなくちゃと思うと逃げ出したくなるんです」