現代の国際舞台で求められる英語力とは
まず「大前提」として知っていただきたいのが、現代の非ネイティブが話す英語では「英語ネイティブらしさ」が必ずしもすべてではないという点です。
語学書などでは「ネイティブはこう言う」「ネイティブはそんな風に言わない」が今でも流行していますし、そういった自然さを追求することは何も悪いことではありません。私も英語の流暢性や発音の自然さを常に追求していますし、普段教えている生徒のお手本でありたいと思っています。
ただし、国際舞台で求められる「英語力」は意外とそうではありません。むしろ、「伝わりやすさ」が評価されます。その評価にあたっては、政治家が母語ではない言語で話す時は「原稿読み」なのか「アドリブ」なのか、そして「その場面」の3つを考慮に入れなければなりません。
世界の潮流として、intelligible「理解しやすい」かどうかが重要とされています。その意味で小泉氏の英語は、英語圏の人にとってはもちろん、国際舞台で仕事をする非ネイティブにとっても理解しやすいものです。
強いて言えば、小泉氏は普段から日本語でも強調して話すタイプの方で、その話し方が英語にも出ているように思います。母音や子音が強く発音されるため、一部の英語圏のスピーカーにとっては理解しづらくなってしまう場合があります。こういった現象を「転移」と言います。母語での話し方が英語にも影響するわけです。
一方、全体としては聞きやすく、流暢性も高く、メッセージも明確です。これは英語では評価されやすいポイントになります。非ネイティブにとってはとくにわかりやすい英語と言え、国際舞台でさらに高く評価される可能性を秘めています。
それでも、小泉氏の英語の評価が真っ二つに分かれてしまうことがあります。それはいったいなぜでしょうか?
「原稿あり」の英語と「アドリブ」の英語――その違いとは
同じ話す英語でも、「原稿がある」時と「原稿がない」時で印象が大きく変わることがあります。英語圏のスピーカーでも原稿があるほうが滑らかに話せます。原稿がない時は考えながら話すため、文法が崩れたり言い直したりすることがよくあります。
まず、「スクリプト英語(原稿あり)」について触れてみましょう。拙著『ビジネスに効く!英語の教養』(ビジネス社)でも述べたことがあるのですが、アメリカの大統領やイギリスの首相を含め、政治家が公の場でスピーチをする時は、専門の優秀なスピーチライターと相談しながら原稿を仕上げます。本人が書いていないほうが多いものです(もちろん相談はするので、言葉の選択や言い回しの工夫はしていると思います)。小泉氏が英語で話す時に確実にうまいとされるのは、この「原稿あり」の時の英語です。
これはチームで仕事をする政治家ならではのことです。公人は失言を避け、国としての指針を正確に伝える責任もあります。かつて環境問題を論じる際にsexy「魅力的な」という口語表現を使って物議を醸したこともあり、最近はかなり気をつけているのでしょう。こういったチームとの連携はむしろ欠かせないと言えます。







