省エネ基準の「義務化」、つまり国のお墨付きがあるのだから、「最新の家なら暖かいはず」と考えるのは自然だ。しかし、当事務所のデータによると、新築住宅の実に約6割で断熱材の施工不備が見つかっている(写真はイメージです) Photo:PIXTA
新築なのになぜ寒い?
要因となる3つのリスク
今年は秋が短く、10月下旬から一気に冬の到来を感じさせる寒さとなった。半袖で過ごせた日から急転直下、慌てて冬支度を始めたという方も多いのではないだろうか。
こうした季節の変わり目に、さくら事務所に多く寄せられるのが、家の“寒さ”に関する相談だ。とりわけ、気密性の高いマンションから戸建て住宅に住み替えた方からは、「新築なのに、なぜこんなに寒いのか」「エアコンの設定温度を上げても足元が冷える」といった切実な声が届く。中には、冬場の光熱費が月6万~7万円に跳ね上がり、家計を圧迫しているというケースさえ耳にする。
折しも、住宅業界は大きな転換点を迎えている。2025年4月から、すべての新築住宅に対して「省エネ基準」への適合が義務化されたのだ。「冬は寒いのが当たり前」とされてきた日本の住宅事情において、この制度が持つ意味は極めて大きい。
だが、制度が整えばただちに“暖かい家”が約束されるわけではないのが実情だ。実際、現場に足を運んでみると、基準と実態がかけ離れている事例も珍しくない。なぜ新築が寒いのか。その要因は、「現場の施工不備」「立地・構造の弱点」「住まい方」という3つのリスクに集約される。これらの実態について、詳しく解説していきたい。
新築住宅の約6割に
断熱材の施工不良
省エネ基準の「義務化」、つまり国のお墨付きがあるのだから、「最新の家なら暖かいはず」と考えるのは自然だ。しかし、当事務所のデータによると、新築住宅の実に約6割で断熱材の施工不備が見つかっている。古い物件の話ではない。今まさに建てられている「新築物件」での数字だ。
断熱材に隙間がある
現場でチェックするのは、断熱材に隙間がないか、図面通りの厚みが確保されているか、所定の部材が使われているかといった基本的なポイントだ。そこで散見されるのは、断熱材の隙間や、複雑な天井の一部での入れ忘れだ。いくら設計上の断熱スペックを高めても、物理的な「穴」があれば性能は著しく低下してしまう。







