301条に基づく制裁関税には税率に上限がなく、4年間の期限を延長することもできる。ただし事前調査が必要で、実際に発動するには、相手国との協議や公聴会開催などの手続きをとらねばならない。

 第1次トランプ政権は、中国に対して301条関税を発動した。バイデン前政権も、これを根拠に中国製の電気自動車(EV)に100%の関税を課した(この措置は現在まで継続している)。

 トランプ大統領が一般教書演説で、今後の関税政策について「手続きは複雑だが、より強固な形になる可能性がある」と述べたのは、301条関税を指しているとグリアUSTR代表は説明する。

 同代表は25日、通商法301条の発動に向けた調査などの手続きを近く始める意向を示したが、市場に混乱を及ぼす過剰生産をしている国・地域や、コメや水産物に過度の補助金を出している政府などを問題視するとした(注4)。

 なお、通商拡大法232条もこれと類似したものだ。「国家安全保障」を理由に大統領が輸入制限や関税を課すことを認めており、商務長官が調査を開始してから270日以内に報告し、その後大統領が最終決定を行う。関税率の上限は存在しない。

 トランプ政権は第1次政権時代からこの条項を根拠にさまざまな品目に関税を課している。半導体・医薬品分野でも調査が行われている(注5)。

関税問題が悪化する可能性もある
“コケ脅し”と受け取るのは危険だ

 今後、事態はどのように展開するだろうか?

 仮に301条関税が、相互関税と同じ対象国・地域に課されることになれば、世界各国・地域は再び大きな打撃を受けるだろう。

 ただし、相互関税の場合とは異なり、301条関税の発動には事前に詳細な調査が必要だ。世界の全ての国・地域を対象にこうした調査を行うのは、容易なことではない。122条関税によって獲得した150日間に行うのは不可能だとする見方もある。

 事態が今後どのように推移するかは、現時点でははっきりと見通せない。

 相互関税の違憲判決が出て、日本では、あたかもトランプ関税問題が消滅したかのような受け止め方がある。関税が戻ってくることに喜んでいる向きもあるだろう。

 しかし、関税問題は解決されたわけではない。関税は決してなくなったわけではないのだ。むしろ、新しい局面を迎えたと考えるべきだろう。

「以前よりも強力」というトランプ大統領の言葉を、“コケ脅し”と受け取ることは危険だ。事態はより悪い方向に向かいつつあるのかもしれないのだ。

(注1)相互関税は、国際緊急経済権限法(IEEPA)を根拠としたものであり、これが最高裁で違法とされた。ただし、全ての関税措置が違法になったわけではない。トランプ政権(1期目・2期目)において、鉄鋼・アルミや自動車は、通商法232条(輸入製品が「国の安全保障」を脅かすと商務省が判断した場合、大統領の権限で追加関税や輸入割り当てなどの制限措置を講じることができる措置)によって関税が賦課されており、これらは影響を受けていない。
(注2)朝日新聞(26年2月27日)
(注3)1974年通商法第301条の強化版は、1988年包括通商競争力法によって追加された。
(注4)違法判断された「相互関税」に代替措置、不公正貿易に関税検討…通商法301条発動へ調査 読売新聞(26年2月26日)
(注5)トランプ大統領の232・301条「関税カード」…発動すると税率調整の万能キーに ヤフーニュース(26年2月24日)
(注6)日本経済新聞(26年2月24日)