こってりラーメンはラーメンではなく「天下一品」という食べ物だ、と言う人もいる。

 それもあって、ラーメンフェスなどのイベントは一切断っていた。「天下一品」1店舗だけの出店であれば検討することもあるが、他店と横並びでイベントに出ることは避けてきた。

 いまでこそランキング番組の常連になっているが、会長は他店と比べられることを嫌っていた。別に悪いことを言われようと、ボロクソに叩かれようと、それは「天下一品」に対して言われていることなので都度向き合うが、「他と比べて……」とか、「ランキングで何位」といったものからは明確に距離を置いてきた。よそはよそ、うちはうちという考え方だ。

「天下一品」のこってりを食べたことがある人であれば、あのスープがすべてを物語っていることがわかるだろう。他に影響されていたら、あのこってりは絶対にでき上がらない。だからこそこってりは命なのだ。

 会長はラーメン界のトップに立ちたいという気持ちもなかった。これだけ評価されていたら1位を獲りたい、表彰されたいという気持ちがあっても不思議ではないだろう。しかし、会長は名誉にはまったく興味がない。

 だからといって、ランキングの企画に出て2位や3位だと、激怒することは間違いない。負けず嫌いの性格もわかっているから、そもそもそういったものにはかかわらないと決めているのだ。そんなことよりも、お客さんにおいしいと思ってもらえるかどうかだけを考えたい。

 時代に取り残されるのは嫌なので、いま流行りの行列ができている新しいお店には貪欲にハシゴしてでも回っていた。こってりの人気は揺るぎないものとしてあるが、その他は時代に合わせて変わっていかなければならない。そのためには新しいものも取り入れてつねに研究しておくことが必要なのだ。

 過去に直営店だけで出しているオリジナルメニューはすべて会長が一から考えて開発していた。他店の研究はこうしたメニューの開発にも活きている。