似ているラーメンがない
京都の“一匹おおかみ”

 京都には食べ物だけでみても、おいしいものは山とある。

 そのなかで京都の代表として選ばれたことは、「天下一品」のやってきたことが間違いでなかったという証明であり、人々に愛されている証拠である。木村会長はこの報告を聞き、それはそれは喜んだ。

 ではなぜ「天下一品」はご当地ラーメンとして認知されなかったのか。

 それは「天下一品」に似ているラーメンがないからである。

「天下一品」に影響されてか、京都には鶏白湯のお店が広がっているが、やっぱり「天下一品」とはまったく違う。「天下一品」は“鶏白湯”という言葉が生まれる前からこってりをつくっていたし、こってりは決して鶏白湯という括りにはハマらない個性的な1杯である。

『天下一品 無限の熱狂が生まれる仕掛け』書影天下一品 無限の熱狂が生まれる仕掛け』(井手隊長著・天下一品監修、日本実業出版社)

「天下一品」は京都発祥であることには間違いないが、他とはまったく違う一匹狼の存在なのだ。もっと言えば、首都圏の人であれば、京都発祥とは知らずに食べている人も多いはずだ。

 いまでこそ「天下一品」があるので京都に濃いラーメンがあることが当たり前かもしれないが、薄味文化の京都において「天下一品」のラーメンは稀有な存在であった。薄味文化のなかでこんなに濃いラーメンが売れたのはすごいことだ。それは、ある意味京都府民の逆ギレ的な売れ方だった。

 会長が他にないものを研究した結果、摩訶不思議なだれも食べたことのない代物ができた。よその屋台でやっているのもたいがい同じようなラーメンばかりだったし、とにかく差別化しなくてはともがきにもがいて生み出した発明品、それが「天下一品」のこってりなのである。