自民党金融調査会の会合であいさつする伊藤達也会長(5月19日) Photo by Go Takano
自民党の金融調査会が5月に取りまとめた提言案が、小規模な信用金庫や信用組合に厳しい現実を突き付けている。いわき信用組合の巨額不祥事によって現行の監督体制の限界が露呈したことを踏まえ、財務局への「専門検査官」の配置や立ち入り検査の増加など、検査体制の抜本的強化を政府に求めているのだ。提言は、信金・信組の“選別”と静かなる新陳代謝の号砲となり得る。長期連載『金融インサイド』の本稿で、その深層を深掘りする。(ダイヤモンド編集部 高野 豪)
いわき信組が示した金融庁の限界
「隠されると難しい」の本音
地域金融機関への監督機能の強化――。ダイヤモンド編集部が入手した自民党金融調査会の提言案には、財務局を含めた検査・監督体制の見直しに向けた具体的な施策が記されている。
注目すべきは、政府に「人材育成・人員増、モニタリング手法の高度化等により、地域金融機関に対する検査・監督機能の強化」を求めたことだ。
その背景には、金利上昇局面でのリスク管理の重要性の高まりに加え、マネーロンダリングや高度化するサイバー攻撃への対応など、経営環境の変化がある。
だが、もう少しひもとくと、巨額の不正融資問題により業務改善命令を受けたいわき信用組合(福島県)の不祥事に行き当たる。
同信組では、旧経営陣主導の下、累計約248億円にも上る不正融資を組織的に隠蔽した。使途不明とされた8億5000万~10億円の大半が反社会的勢力の懐に流れた事実も発覚した。
2011年の東日本大震災による被害を受け、200億円もの公的資金が同信組に投入されていた。金融庁と全国信用協同組合連合会(全信組連)が同信組に対するモニタリングをしてきたが、それでも1990年代から続く反社との“黒い関係”を見抜けなかった。
なぜ、見抜けなかったのか。金融庁の関係者は、その理由について、「検査といえば強いイメージがあるかもしれないが、捜査ではない。(不祥事を)隠されると、(見抜くことが)難しいという面はある」と本音を漏らす。
提言案の狙いは、検査・監督体制の見直しだけにとどまらない。現実と照らし合わせてみると、少子高齢化や預金減少が進む地方の小規模な信用金庫・信用組合の“選別”を中央金融機関が迫られるとも読める内容が記されていた。
提言案に盛り込まれた「検査・監督体制の見直し」の具体的な中身とは何か。次ページでは、その全容をひもとくとともに、中央金融機関の救済スキームが限界を迎え、小規模な信金・信組が選別の波にのまれる残酷な事情を明らかにする。







