逆にいうと、在職期間が短い人にはうがった評価をするかもしれません。こういったバイアスは不公平な評価につながり、結果として格差が生まれることがあるので注意が必要になります。

主観的評価が持つ柔軟性が
プラスに働くことも

 しかし、主観的な評価は必ずしも悪いことばかりではありません。たとえば、先ほど説明したように、環境の変化への対応が容易になり、安心して業務に取り組むことができます。

 先ほどは気温という変数を組み込んで事後的に評価するケースを考えましたが、近年でイメージしやすい外的な要因として真っ先に思いつくのは、新型コロナウイルスでしょう。新型コロナウイルスによって飲食店の売上高が下がっても、それは店長のせいではありません。コロナのせいです。

 このとき、主観的な評価なら事後的に店長の評価を是正できます。そうすると、店長はコロナ禍を踏まえて与えられた目標に向けてまだまだ頑張ってくれそうです。

 また、近畿大学の北田智久の博士論文では、主観的な評価を実施していると、部下が上司に正直な情報を伝える可能性があると指摘されています(北田2018)。私が「会計人コース」というウェブ雑誌に書いた記事の内容をベースに説明します。

 たとえば、営業が外回りで、帰社後に訪問件数を申告するケースを考えましょう。この従業員は過去の実績から、15件の訪問が今日の目標として与えられていたとします。

 しかしこの日はあいにくの大雨で、移動に時間がかかり、15件を達成するのはかなり困難です。そして、上司はこの従業員が実際に何件訪問したかを知ることができません。あくまでも部下の申告に基づきます。

 ここで、実際に営業に行った従業員が12件しか回れなかったとします。つまり、目標を達成できていません。このとき訪問件数で評価をされていれば、従業員にはウソをついて高い評価を得るインセンティブがあります。

 上司は実際に部下がどれだけ回ったのかわからない状況なので、たとえば「いや~、ギリギリ15件いけましたわ」的な報告をしておけばよいのです。このような高い評価が、将来の昇進やボーナスにつながります。