武田薬品工業と京都大学iPS細胞研究所は2月、10年間にわたる共同研究の成果を発表。写真は武田薬品のクリストフ・ウェバー社長CEO(右)と山中伸弥教授 Photo:医薬経済社
今年は「iPS細胞製品元年」となりそうだ。世界初のiPS細胞製品が3月に承認される見通しとなった(編集部注:3月6日に2製品が国内で条件・期限付きで承認された)。住友ファーマによるパーキンソン病治療の「アムシェプリ」と、クオリプスによる重症心不全を対象とした「リハート」の2製品。両社とも承認を機に再生医療事業に弾みをつけたい意向だ。住友ファーマの木村徹社長はアムシェプリで「グローバルには1ビリオン(約1550億円)を超える」と鼻息は荒い。
一方、iPS細胞をめぐっては、奇しくも2月に武田薬品が京都大学iPS細胞研究所(CiRA)と続けてきた共同研究「T-CiRAプログラム」を3月末で終了すると発表したばかり。世界初の称号を得た両企業と武田薬品で明暗が分かれている。
アムシェプリは、脳の運動調整に関わるドーパミンを産生する神経細胞が減って発症するパーキンソン病が対象。iPS細胞からつくった神経細胞を患者の脳に移植し、運動機能の改善をめざす。審査では6例中4例で症状改善の傾向がみられ、有効性があると推定された。暫定販売できる「承認及び期限付き承認」の適用を受けた。いわば「仮承認」で、正式承認には7年以内に35例の追加データを提出して有効性を示す必要がある。
販売後の課題としては、投与に伴う手術技術の普及がある。アムシェプリは頭蓋骨に穴を開け、注射針のような器具で細胞を移植する。手術技術は治験を行った京都大学附属病院で確立されたが、木村社長は「それを医療機関にどのようにトランスファー(技術移転)するのか少し手探り」と課題を打ち明ける。
パーキンソン病患者は推定で国内30万人、米国70万~100万人と市場性は大きい。木村社長は「かなりの人がこの治療法の有効性と侵襲性を含めて適応できる」と見通し、普及に自信を見せる。
住友ファーマは再生・細胞医薬事業を成長の柱と位置付けており、網膜色素上皮裂孔や網膜色素変性を対象とした治験も実施中。アムシェプリを第1弾製品として、40年までに合計で最大3500億円規模の売上げをめざす。
一方、クオリプスはリハートの販売により黒字化をめざす。虚血性心筋症による重症心不全を対象とした製品で、iPS細胞からつくった心筋細胞シートを心臓表面に貼り付けることで心機能の回復をめざす。クオリプスを17年に創業した大阪大学の澤芳樹名誉教授の研究成果が基盤となっている。リハートでは8例全部で運動機能の指標が改善したという。こちらも「仮承認」で、正式承認には7年以内に投与例75例、非投与群150例を集めて有効性と安全性を検証しなければならない。
澤教授は以前、患者自身の骨格筋芽細胞を使った心筋細胞シート「ハートシート」の開発にも関わったが失敗した。テルモと阪大が共同開発した製品で、仮承認の第1号の適用を受けたが、その後、有効性が認められず、仮承認を取り消された。澤教授としてはハートシートでのリベンジとなる。クオリプスは開発の先行投資が嵩んで26年3月期の業績は赤字の見通しだが、リハートで巻き返しを狙う。







