「反復練習」だけでは本質は理解できない

――それは手間がかかりますね。前回もお話があったように、教室は少人数にならざるを得ない。

入江 間違える経験という意味では、分数にも同じことが言えるかもしれませんね。小学生では、分数あたりから算数が苦手になる子が多くなります。その理由の一つとして、解き方を暗記させられるように教えられていることがあると思います。「要するに分数の割り算は逆にして掛ければいいんだよ」と。

 確かにそう覚えれば計算はできますが、どれだけ練習を積んでも割り算を理解したことにはなりません。その理由を理解するには、正解を与えるのではなく、自分で間違えて、なぜそれが間違いなのかを自分で考える時間が必要です。私自身の経験を振り返ってみても、「なぜそうなるのか」ということを間違えながら学ぶ機会は乏しかったような気がします。

望月 問題を解かせると、優秀な生徒ほど式と答えを覚えてしまう。だから、ちょっと形を変えると、「こんなのやっていません」と言い出します。

入江 「やっていないからできない」というのは、考えているのではなく、単なるパターン認識として情報処理しているだけということですよね。頻出パターンを反復して解けるように指導する教育が多いですが、生徒はそれで解けるようになることを「考える力が付いた」と勘違いしている。実際には、パターン暗記しているだけで、自分で考える力は身に付いていない。だから応用問題になると手も足も出ません。

入江翔一(いりえ・しょういち)入江翔一(いりえ・しょういち)
数学専門塾「数楽道場」代表。現役医師。1988年大阪生まれ。灘高等学校、東京大学医学部医学科卒。医師として勤務しながら、2021年東京大学理学部数学科卒。25年から札幌市に移住、26年3月開校。

望月 多くの保護者や受験生が誤解しているというか理解していない点が、次々習う新たな事柄は、反復練習によって定着するという考え方です。初めてだと難解な分数の割り算も、反復練習で自然に身に付くのだから、反復練習こそ大事という考えです。

入江 子どもに罪はありません。それが正しい勉強法だと教わってきたからです。しかし、そのやり方では処理する力は身に付いても、自分で考える力はなかなか育ちません。先ほどの分数の例でも、分数の計算ができることと、分数の計算を理解することは違います。理解なき実践は、その土台が揺らいだとき非常に危ういです。

望月 反復練習がいけないとか必要ないということではありません。分数の割り算の計算法をお父さんが説明して、子どもに練習問題を20題作ってあげてやってみなさいと声を掛けたとき、「お父さんの説明で分かったから、練習問題なんていらないよ」と子どもが口にしたら、「頭で分かることと実際にできることは違うのだから練習をする必要がある、練習するから間違えずにできるようになる」と説得するはずです。