池脇千鶴がマンガみたいな走りで名シーン誕生!“かつての朝ドラヒロインたち”が爪痕を残した〈ばけばけ第123回〉

トキはヘブンのすべてを台無しにしたのか

 主題歌明け。「どうして子どもでも読める民話集を書いたのか」とあきれているイライザはWHY WHY WHYと天国のヘブンに問いかける。

 なんだかイライザの声に棘(とげ)があり、言葉がわからない司之介(岡部たかし)ですら彼女が怒っているらしいことは感じる。

 心配そうなフミ(池脇千鶴)、イライザを見る目が険しい。この人はいつも娘を守ろうとしている。

 イライザは「いい思い出を話し合いましょう」と気持ちを切り替えようと提案する。そこは大人だし、知性もある人だから、亡くなった人のことを悪く言うのは礼儀に反すると考えたのであろう。つい、カッとなってしまっただけなのだ、たぶん。

 でもトキは気持ちを切り替えることができない。「私のせいなんです」とたどたどしい英語で謝る。アイムソーリーを一応聞き取るイライザだが、英語が話せないトキを小馬鹿にしている節がある。

 私が読める本をお願いしたと言うトキに、イライザはやりきれない気持ちになって、机をガン!と大きな音を立てる。トミーもそうで、外国人俳優は感情が激しくなると机を大きな音をさせて叩くようだ。

 ヘブンが終わったという人たちをギャフンと言わせる最後のチャンスだったのに、とイライザは再び怒りの火を燃やす(ギャフンとはイライザは言っていないが、そういう意味合いだろう)。

 トキはアイムソーリーしか言えない。

 イライザは泣きながら「信じられない」とうめく。

「台無しだわ。わかる? すべて、台無しにしたの」

 イライザはぶんむくれて帰ってしまう。フミは「とりあえず塩まいておく」とつぶやく。いまの彼女は、まく塩に困っていない。余るほど塩もあるだろう。

 シャーロット・ケイト・フォックスは『マッサン』(2014年度後期)では日本人と結婚し日本に来て、日本の習慣を理解していく健気(けなげ)な外国人を演じている。姑(しゅうとめ)や恋敵に厳しくされて苦労している朝ドラヒロインを演じていた彼女が、いまや、朝ドラヒロインを虐める側に。しかも若干日本を見下している側になるなんて、感慨無量である。

 丈がイライザを全力で追いかける。ここがうまいのが、外で丈が1回つまずいて転ぶことだ。そうしないとすぐに追いついてしまう。転んだけど立て直し、イライザに追いつく。

「先生はずっと 怪談を書きたかったんだと思います」

 丈は怪談を「GHOST STORIES」と英訳する。

 丈は、ヘブンは「怪談」をトキに頼まれてしぶしぶ書いたわけではなく、潜在的に「怪談」を書いてみたい意識があったと考える。