主人公の寅子からは見えない問題がある
写真提供:NHK
「地獄」という言葉は『虎に翼』のキーワードのひとつでもあった。例えば、寅子に母(石田ゆり子)が「それでも、本気で、地獄を見る覚悟はあるの?」と問いかけた。寅子は地獄を見る覚悟で生きて地獄に自ら足を踏み入れていき、最後に母に再度「地獄の道は?」と問われ「最高です」と答えた。
登場人物がわきまえず、思ったことをはっきり言い、率先して「地獄」に立ち向かっていく。その姿が痛快だった『虎に翼』。現実社会では、決して怒らず、ことを荒立てず、なにごとも穏便に済ませることを良しとされがちだ。それでは根本的な解決にならず、忍耐を強いられ損になるばかり、なんてこともある。それに対して吉田恵里香さんは抗う姿勢だ。怒りたかったら怒る。言いたいことは言う。
「怒りの感情や、怒りの声を上げることはなぜかネガティブに受け取られることが多いですよね。怒るのは感情的だとか、怒ったら負けみたいな謎の理屈が社会に蔓延している気がしています。私はその逆で、怒ることの大事さを描きたい。なぜその人が怒るのか。怒りに至った歴史や社会構造をしっかり理解しないまま、ただ怒ることをネガティブと短絡的に捉える社会に暗いものを私は感じます。だから、怒っていいんだよ、声を上げていいんだよ、ということを『虎に翼』ではずっと描いてきました」
怒っていい、声を上げていい、そうドラマで言ってもらえて、どれだけホッとしたか。そういう視聴者が多かった。
そんなふうに助かった多くの声に支えられ、『虎に翼』放送から2年。吉田さんはスピンオフドラマ『山田轟法律事務所』を描いた。「どの地獄で何と戦いたいか決めるのはその人自身」と言ったよねと法律学校の学友・轟(戸塚純貴)を主人公に、終戦直後、焼け跡で生き抜く人々の物語だ。
「『虎に翼』を書いてから、講演の依頼をいただくことも多く、そこでお話しながら改めて作品のことを考えると、憲法14条をテーマにした作品として取りこぼしていた問題があったと感じていました。主人公の寅子からは見えない問題がまだまだこの世界にはたくさんある。その描けなかったところを、今度はよねの目線でスポットライトを当てたいと考えました」







