体裁よく整えた資料、流行りの横文字を並べた発言。怒られはしないが、誰の心も動かさない。そんな「仕事をやった気になっている」自分にもやもやしていた筆者は、映画監督の長久允氏が書いた『あなたにしか作れないけれど、世界に通用してしまう 脚本の教室』を読み、ある一言に胸をえぐられるような痛みを感じた。(文/飯室 佐世子)
「波風を立てない」ことの虚しさ
体裁よく資料を整え、会議では流行りのビジネス用語を使ってそれらしい発言をする。上司やクライアントからは「きれいにまとまってるね」と及第点をもらえる。
でも、そこから人の心を動かすような成果が生まれることはない。
心のどこかで「中身がないな」と気づきながらも、波風を立てない正解らしき仕事を量産し続ける日々に、なんとも言えない虚しさを抱えていた。
そんな時、一冊の本を開いた。サンダンス映画祭でショートフィルム部門のグランプリを受賞した映画監督・長久允氏の著書『あなたにしか作れないけれど、世界に通用してしまう 脚本の教室』だ。
ページをめくってすぐ、目に飛び込んできた見出しに、ぎくりとした。
「それっぽいもの」は最低だぜ!
胸の奥、ぐさり。
まるで、そつなくこなした気になっている私の仕事を、真っ向から指差して言われているようだった。
「空っぽなもの」は誰にも刺さらない
本の中で著者は、学生時代の苦い失敗談を告白している。
かつての彼は、自分が最高だと思うかよりも、他者から評価されることを目指し、「なんとなく映画っぽい」ものを作っていたという。
「売れるために、これをやらねば」と自分の本当の気持ちを横に置いた結果、「雰囲気だけの空っぽな映画」になり、何の賞にも引っかからなかったという。
本当にやりたいことではないけれど、評価されそうだなぁ、他のインディーズ映画よりも技術がありそうに見えてるよなぁ、うん、だから売れるために、私はこれをやらねばならぬ。
――『あなたにしか作れないけれど、世界に通用してしまう 脚本の教室』P.6より
そのエピソードに、私は自分の働き方を重ね合わせずにはいられなかった。
私がやっていたのも、自分の熱量を置き去りにした、ただのビジネスパーソンっぽい仕事だったのではないか……。
「これでいい」と思えるために
著者はその後、「それっぽさ」を捨てて自由にのびのびと書いたことで、サンダンス映画祭でグランプリを獲得する。
「この映画は他の何にも似ていない」と絶賛されたその根底にあるのは、圧倒的な個人的な熱量だ。
著者は読者に向けて、力強く語りかける。
外側をどんなに綺麗にコーティングしても、中身が空っぽだったら、それは見る人にはバレてしまうんだ。逆に言えば、どんなにはちゃめちゃでも、真ん中にあなたが全力で伝えたいエモーションがあるならば、それでいいのだ。
――『あなたにしか作れないけれど、世界に通用してしまう 脚本の教室』P.39より
もちろん、正解を追い求めて良い仕事もある。だけど、できるなら、1つでも。自分が本心から「やりたい」と思える熱量を、かけられる何かが欲しいものだ。
この本は、無難な仕事に逃げ込もうとする私をとっ捕まえて殴り、「これでいいんだっけ?」を今一度確かめさせてくれる、そんな本だった。
(本稿は、『あなたにしか作れないけれど、世界に通用してしまう 脚本の教室』の発売を記念したオリジナル記事です)
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佐久間宣行さん、ラランド・サーヤさん大絶賛!
それっぽいもの」ではなく、
「本当に心を動かすもの」を
表現がいまいちしっくりこない。
この仕事、自分がやらなくてもいいような気がする。
もっとおもしろいものを作りたい。
そんな悩みに、現役サラリーマンでありながら、海外の映画賞で「日本人初」の快挙を総ナメしてきた著者が答えます。
どうしたら、自分だけの表現をし、それを成果に結びつけられるのか。
どんな人でも、「あなたにしか作れない作品」を生み出せるようになる、まったく新しい脚本術が誕生しました!

これからの「世界のスタンダード」を伝える
いま世界で本当に評価されるものは、「何かに似ているもの」ではありません。
ハリウッドで必ず聞かれること。それは、
“What’s your VOICE?”
あなたのボイスは何ですか?
ということです。
つまり、他の誰でもない「あなたが」何を伝えたいか、ということ。
では具体的にどうすればいいのか。
すべてを自分で切り開いてきた著者が、包み隠さず伝えます。
真剣に表現したいと思う人、自分らしさを失わずに働きたいと思う人に、とても響く内容です。
本書の内容
はじめに
「この本の結論を先に言います。」
「それっぽいもの」は最低だぜ!
王道の脚本方式と完全自己流の脚本方式をミックスして
そもそも脚本家ってどうやってなったらいいかわからない問題
Lesson0 世界一になるまでの変則ルート
「私が映画を作ったのは32歳から! おせ~!」
一度は夢をあきらめて、就職! (挫折期)
CMプランナーから、店頭ビデオプランナーに (朦朧期)
倒れて気づく。「クライアントは自分」
そして世界一。日本人初の快挙を、まさか私が。
「そもそも映画ってなんなの?」
Lesson1 何を書く?
「脚本ってなんですか?」
設計図としての書式
Step0 私は何を書くべきなのかを見つける
Lesson2 王道! ハリウッド式脚本法
「で、どうやって書くの?」
Step1 「ログライン」を書く
Step2 登場人物を作り込む
Step3 3幕構成にする
Step4 シーンを作る シーンカード入れ替え検証
Step5 セリフとト書きを書く
Interval あなたが天才かどうかという重要な話。
Lesson3 誰でもできる長久式脚本法
「めっちゃ変な書き方。それでいい。」
Step1 はじめに「怒り」と「悲しみ」がある
Step2 音楽を見つける
Step3 エンドロールの歌詞を書く
Step4 映画のタイトルを決める
Step5 ポエトリーリーディング脚本法
Step6 そのセリフをシーンや人物に振り分ける
Step7 音だけの2時間映画を作る
Step8 直し続ける
Lesson4 迷ったとき役立つかもしれない裏技集
「何も浮かばないよ!」
裏技1 絶対に誰にも言いたくない思い出を書く。
裏技2 SNSには書けない「よくない感情」という金脈
裏技3 会話のセリフがうまく書けないなら
裏技4 設定がうまく伝わってないと感じたら
裏技5 タイトルから考えちゃうっていうのはどう?
裏技6 「ポエトリーリーディング脚本法」に欠かせない号泣プレイリスト
裏技7 「うまい」は敵!
裏技8 極論! 10年書かないでみる
裏技9 おもしろくなくてもいいじゃないか(本気で言っている)
Lesson5 書いたあとどうする?
「映像化しちゃう?」
お金集めをどうするか(自腹、賞金、クラファンそれぞれのやり方)
予算別! 映画の作り方(10万円、100万円、1000万円)
実写映画撮影現場での時間削減工夫集(事前準備と心持ち)
ロケ場所についての具体的解決案
Lesson6 あなたにしか作れないものがある
「情緒不安定なあなたは向いている」
「当事者しか知らない感情がある」
「だから、本当のことしか書かない」……