同じ強迫症の遺伝子を持っていても
現れる特性は人それぞれ

・長男——幼い頃から野球に打ち込み、スポーツの特待生として中学生から寮生活をするようになりました。しかし、打ち込むことがなくなったとき、あるいは肘のケガなどで野球を引退したときに加害恐怖(編集部注/意図せず他人に危害を加えてしまうかもしれないという不安や強迫観念に苦しむ状態)が表れ、強迫症になる可能性があります。

・次男——中学校で同級生からからかわれたことをきっかけに学校を休む日がでてきて、近所のメンタルクリニックへ行きました。そこの先生が「無理して学校へ行く必要はない」というので学校を休むようになったら、もともと長めだった入浴時間がさらに長くなり、自分の見た目が醜いと感じ、何度も鏡を確認するようになりました(身体醜形症)。

 次男も強迫遺伝子を持っており、暇な時間と打ち込むものがなくなり、相対的に儀式(編集部注/どんなときもルーティンを遵守して仕事や家事を行うこと)をしやすい家での時間が増え、強迫が悪化していきます。

・長女——忘れ物の天才である母親似の長女も、強迫にならないとも限りません。大人になって妊娠・出産し、子どもが生まれた直後に手洗いが増え、そのまま強迫症に発展する可能性があります。

・父親——もう1人、忘れてはならないのが父親です。3人の子どもを育てるためにワーカホリックであるうちは、強迫が仕事に置き換わっています。しかし、どんな働き者でもいつかは退職・引退を迎えます。定年退職し、家でブラブラするようになったとたん、自宅の鍵の確認が増えていきます(確認強迫)。妻から「またやってる」と言われ、やめようとすればするほどまたやりたくなってしまう、そんなシナリオが考えられます。

 この強迫一家のストーリー、長男は加害恐怖、次男は身体醜形症、長女は不潔恐怖、父親は確認強迫と、全員が違う症状であることに気づかれたでしょうか。

 私の経験上、家族全員が同じ症状になることは少ないです。これは1人が洗面所を独占して手洗いをしていたとしたら、ほかの家族は洗面所が使えないため、違う症状にならざるをえないからかもしれません。