あるいは誰かの強迫が悪化すると、ほかの家族はその人の分まで働く必要が出てきたり、巻き込まれたりするからかもしれません。次はその巻き込みについて説明しましょう。

家族で生活するうちに
強化されていく強迫の症状

 強迫症の人は、家族にも自分と同じように手洗いすることを要求したり、「僕は誰も傷つけていないよね?」と家族に何度も確認して、相手に保証させようとしたりします(加害恐怖)。

 強迫症の本人が儀式をほかの人に代行させる(代理儀式)、または家族にルールどおりの行動を強要することを「巻き込み」といいます。巻き込みに応じると本人の要求がさらに増え、悪化していきます。

 母親に向かって今日あったことを話すのも巻き込みで、強迫行為です。

 普通の人はモヤモヤすることがあっても、自分の中で「こんなことを考えてもしょうがない」と折り合いをつけて次の行動に移りますが、強迫症の人はモヤモヤした感覚を1人で抱えきれず、相手に話すことで頭の中をスッキリさせようとします。機能的には確認強迫や懺悔強迫(編集部注/自分の罪を他人に繰り返し告白する病)の一種です。

 巻き込みが生じるのは親子だけではありません。夫婦や上司と部下、兄弟姉妹というケースもあります。親が子どもを強迫的に支配することもあります。家を汚さないために親が幼児期の子どもにオムツをつけさせたり、保育園や学校を休ませてまで確認につきあわせたりするようになれば、虐待認定を受けても仕方ないでしょう。

 子どもの場合は、巻き込まれていたことに大人になってから気づくこともあります。「実家では家に帰ったらすぐにシャワーを浴びる決まりがあったけれど、これはうちだけだったのか」と、結婚してから、実家の異様さに気づくこともあります。

機嫌を損ねないように
甘やかすのは本人のためにならない

 ここで大切なのは、「巻き込み」があるということは「巻き込まれ」もあるということです。

 強迫症を持つ人は自分の思いどおりにならないと嫌悪感をあらわにします。儀式を我慢しなければならないときも、儀式をしているときも、邪魔されるのを嫌がります。