サラリーマンでありながら海外の映画祭でグランプリを受賞した長久允氏。その思考法と脚本術を存分に伝える『あなたにしか作れないけれど、世界に通用してしまう 脚本の教室』が発売となりました。佐久間宣行さん、ラランド・サーヤさんも大絶賛する同書から、抜粋・再構成して特別公開します。

脚本の教室Photo: Adobe Stock

一瞬の迷いをどう扱うか

 本当はこっちの方がいいと思っていたのに、気まずくて言えなかった。

 やっぱりこうすればよかった。

 気づいていたからやっておけばよかった。

 プロジェクトが終わったあと、そう思ったことはないでしょうか。

 大事な仕事で後悔しないために、おすすめの習慣があります。

「直し続ける」という心持ち

 それは、「直し続ける」ということ。

 映画づくりにおいても、先ほどの状況はよく起こります。脚本が完成したあとに、実際の撮影が始まるので、書いた時点と作品が完成する時点が遠いのです。

 そうなったとき、当然、想定外のことも起こり得ます。

 たとえば、ロケハンをしていて、魅力的なレトロな廃墟ボウリング場があったら、そのシーンを入れたくなりますよね。

 多くの脚本術の場合、衝動的な「この場所で撮りたい、このシーンを追加したい」などという誘惑には打ち勝ち、絶対に入れてはならない、と書かれているのですが、私はどんどん入れたほうがいいと思います

「初稿」を完璧に再現するのではなく、そこを出発点として、人や場所によって有機的に変化させていくのです。

 なぜなら、作り手であるあなたが、衝動的にときめいたものがあれば、それを見た誰かの心も掴むはずだから

 執筆時の中心は「自分の脳の中」だったとしても、定着していく際には、脳の外にこそ魅力的なものは溢れているということを忘れてはなりません。

常により良い方向へ

 そうして撮影日がやってきます。カメラが回ります。

 1テイク目、俳優がセリフを言ったあとも、まだなお、もっといい言い回しが思い浮かんだら修正すべきです。もっといい動きが思い浮かんだら修正すべきです。

 それから編集作業に入ったとしても、まだ完成ではない。まだ公開まで先がある。

 だからとにかく、思いつくことはまだまだ自由にトライして構いません。

 常に、もっと良いものはないか?

 そのことだけを考えて、脳をフル回転させ続けるべきなのです。