「言語化にモヤモヤする」
「即答よりじっくり考えるほうが大事」
「口下手のままでもいいじゃない」…

など、まったく新しいコミュ力を説いた書籍『言語化だけじゃ伝わんない ―― 絵を描くように「考える・伝える」技術』が発売された。著者でイラストレーターのヤギワタル氏は、これまで200冊以上の書籍でイラストや装画を担当してきて、今回が初の単著となる。本書では、昨今の「言語化ブーム」に対して警鐘を鳴らし、「言語化“以外”に目を向けること」をイラストレーターならではの視点で面白く解説している。本記事では、その中からビジネスパーソンにも役立つノウハウとして紹介する。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

呆れるほど「指示がヘタクソな上司」の特徴・ワースト1

「指示がヘタクソな上司」の特徴

「なんでそんな解釈になるの?」
「普通わかるでしょ」

 部下に対して、そうイライラしている上司は少なくありません。

 ですが、『言語化だけじゃ伝わんない』という本を読むと、そのすれ違いは、部下だけの問題ではないことがわかります。

 むしろ、多くの場合、原因は「言葉を雑にまとめすぎていること」にあります。

それ実は何も伝わっていない

 本書では、制作会社時代のこんなエピソードが紹介されています。

「コップをレンタルしてきて」
私が制作会社に勤めていたとき、先輩からこんな指示を受けました。
広告の撮影に使うコップが必要だというのです。
撮影用の食器をレンタルできるお店があって、私はコップを探しに行きました。
コップコーナーに行って驚いたのは「コップにもいろいろある!」ということでした。
背の低いコップ、背が高いコップ、細長いコップ。
ありすぎてどのコップを借りればいいかわかりません。
いまなら、スマホでコップコーナーを撮影して、どれがいいか聞くことができます。
でも、当時の携帯電話でその手段は使えませんでした。
こんなことなら「コップを借りてきて」と言われたときにもっと確認すべきでした。
――『言語化だけじゃ伝わんない ―― 絵を描くように「考える・伝える」技術』より

 これは、仕事で本当によく起きる話です。
 上司は、「コップ」と言えば伝わると思っている。
 ですが、受け手側には、「どんなコップか」のイメージが存在していない。

 つまり、「言葉は理解できている」のに、「意図は共有できていない」のです

指示が下手な人ほど
「言葉が通じた」と勘違いする

 本書では、さらにこう続きます。

このエピソードは、言葉の裏側にある厄介な面を表しています。
表の面は、短い言葉にまとめられるからパッと伝えられるということ。
その裏側には、「伝わっていないことに気づきにくい」という面があるのです。
ひとまとめにする言葉の裏側の面は、具体的な行動を起こすときにあらわれます。

「コップ借りてきて」という指示に「はいわかりました」と答えた私は、コップがどういうものかはわかっています。
でも、「先輩が具体的にどんなコップを求めていたか」はわかっていません。
「コップ」という言葉はさまざまな種類のコップをひとまとめにしたものです。
家でお茶を飲むときに使うのも、水筒の水を飲むときに使うのも、同じコップです。
一言でまとめるのは、相手に伝えたいことをパッと伝えるためです。
でも、まとめたせいで、「すれちがい」が生まれてしまう
先輩の想像するコップと、私の思うコップにズレが生じるからです。
――『言語化だけじゃ伝わんない ―― 絵を描くように「考える・伝える」技術』より

 指示がヘタな上司ほど、「単語を言えば伝わる」と思っています
 ですが実際には、人によって頭の中に浮かぶイメージは違う。

 だから、「コップ」という一言だけでは不十分なのです。

本当に仕事ができる人は
「ズレ」を減らそうとする

 本書では、最後にこう語られています。

言葉によるコミュニケーションは、たとえて言うなら、「ひとまとめに束ねたくじを差し出して、相手に引いてもらうようなもの」です。
伝える側は、当たりくじを必ずひとつ、その中に入れています。
「私の思うコップはコレです。コレを引いたら正解です!」
話を聞いた受け手は「これが正解だろう」と予想してくじを引きます。
ただし、それが当たりかどうかは、引いたくじを相手に見せてみないとわかりません。
当たりの確率を上げるためには、束ねているくじの本数を減らす必要があります。
そのためには、言葉で質問することです

「どういうコップですか?」
「なんのために使うコップですか?」

それで、「ビールの撮影に使う」という答えが引き出せたら、くじの数は減ります。
「コップ」という言葉でくくっていたものが、「ビール用のコップ」になるからです。
質問をするためには、自分と相手のズレに気づかなければいけません。
でも、それが難しいのです。
すでに言葉として、わかってしまっているからです
「ああ、コップですね」と。
だからこそ、行動に移してからズレに気づくことが圧倒的に多いのです。
行動に移すと、ズレていることが目に見えて明らかになるからです。
――『言語化だけじゃ伝わんない ―― 絵を描くように「考える・伝える」技術』より

 これは、コミュニケーションの本質です。
 仕事ができない上司ほど、「言えば伝わる」と思っている
 一方、仕事ができる人は、「言葉は必ずズレる」と理解している

 だから、用途を伝える。背景を説明する。確認を取る。
 つまり、「相手が外れくじを引かない工夫」をしているのです。

指示力とは、「言葉を増やすこと」ではない

『言語化だけじゃ伝わんない』は、「指示が上手い人」の特徴を、とてもわかりやすく教えてくれます。

 本当に大事なのは、「短く命令すること」ではありません。
 相手がどう誤解しそうかを想像すること
 つまり、指示力とは、ズレを減らす能力なのです。

ヤギワタル
1981年静岡県生まれ。制作会社にて、雑誌タイアップ広告の制作進行を務めたのち、フリーランスのライターを経験。国際情勢関連の英日翻訳をやりながら、2011年からイラストレーターの活動をスタート。現在は書籍・雑誌・広告など幅広く活動中。特に、ビジネス書や新書での挿絵や図解を担当することが多く、10年以上、活躍している。
これまで、装画・イラストを担当した書籍は200冊以上。『言語化だけじゃ伝わんない ―― 絵を描くように「考える・伝える」技術』(ダイヤモンド社)が初の単著となる。