サラリーマンでありながら海外の映画祭でグランプリを受賞した長久允氏。その思考法と脚本術を存分に伝える『あなたにしか作れないけれど、世界に通用してしまう 脚本の教室』が発売となりました。佐久間宣行さん、ラランド・サーヤさんも大絶賛する同書から、抜粋・再構成して特別公開します。

脚本の教室Photo: Adobe Stock

 相手を尊重して、基本は自由に任せるという人は多いかもしれません。

 自分が一歩下がることで、うまくいってきたという人も。

 ですが、多くの人が参加するプロジェクトでは、そうも言っていられない場面があります。

 それぞれが何を考えているかはわからないので、「こんなはずじゃなかった」という悪循環に陥ってしまいがちです。

極端すぎる思考をやめる

 そうやってすべてひとりで抱え込んでしまうのは、プロジェクトのためになりません。

 ではどうしたらいいか。

 たとえば映画の現場では、俳優部に撮影前に別日をもらえる場合は、事前に演技のリハーサルをさせてもらっています。

 そもそも演劇は、俳優の稽古が1~2か月ありますが、映画撮影ではほとんどの場合、稽古という概念は存在しません。

 ボクシングやバレエなど特殊な技能が必要な役柄の場合はその練習はしますが、「演技の稽古」は0日で撮影当日になります。ちょっと極端すぎないか? と思うのです。

 もちろん、「撮影当日に練習なしで初めてやる新鮮な演技」が至高! という考えもわからなくもないのですが、それはそれで「演技」というものを逆に信頼していない考えではないか、とも思うわけです。

「一発OK」は可能なこと

 私たちは俳優という職人と共犯関係でなければならないと思います。

 彼ら彼女たちと、脚本の方向性やキャラクター設定、そしてそのシーンでの細やかな狙いを共有し、話し合い、確認作業を積み重ねて、ベストのテイクを撮るべきだと思っています。

 そうすることで、「(大御所)俳優が、突然現場でとっぴな演技を提案してきて、現場が困る」という時間を避けることができます。

 や、それはそれで楽しいのですが、時間や予算がない場合においては、そうも言ってられないので、協力し合ってひとつのゴールを目指していきましょう

 実際に事前に話し合いを重ねて、稽古を経ることができた現場は、演技的にも演出的にも双方のブレがないわけですから、ほぼ1テイクでOKを出していくことができます。

 やはりそれは、俳優部にもストレスを感じさせずに進められる確実な方法だとも思うのです。

 どんなプロジェクトでも、メンバーは同じ船に乗っている仲間。

 そこに集う仲間を信頼するのが、悪循環にはまらないコツです。