「信じられない光景を目にしているという不思議な感覚」

 最後のシーンを撮り終わった後、少し待っていてくださいという風に言われて待っていたら、バンっと扉が開いき共演者の皆さんがたくさん来られていたんです。私のクランクアップのためにわざわざ大阪まで来てくださる温かいお気持ちに幸せを感じました。スタッフ、キャストの皆さんから拍手をいただいたときは、やり遂げたという感覚よりは、状況がまだつかめていないような、ありえない信じられない光景を目にしているという不思議な感覚でした。

――朝ドラの経験が今後のキャリアにどう生きると思いますか。

 ふじきみつ彦さんからトキというキャラクターは高石さんのままでやってくださいと言われて、私ってなんだろう?と思いながら現場に立ったら、自然に私のなかからトキという人格が出てきて、そこからはセリフや行動に対して違和感がなくやれました。

 演じながら、自分の過去の経験がよみがえってきたりとか、前に感じた感情みたいなものが出てきて重なったり、いままで経験したことのない経験を味わいました。それまでの私は、役を作りこんで、その役で生きることだけに集中していて、そこに自分の感情が入ることはなかったのですが、『ばけばけ』では素直にリアルに近い感覚が出た気がします。

――トキと自分を重ねたそうですが、プライベートでトキが出てくることはありますか。

 それはないです。カットがかかったら自分に戻る感覚はありました。役を引きずっちゃうとなかなかつらいです。例えばトキが石を投げられ傷を負った週は、1週間、ずっと毎朝泣く場面から撮影スタートしていて、そのときはトキが自分のなかから出てくるのを抑制していました。

 前室ではスタッフやキャストが集まるのですが、私にはひとりになる時間が必要で、スタッフの方が私が1人になれる空間を作ってくださって。そのおかげでちゃんといい意味でトキと自分の線が引けた気がします。こういった役への取り組みを今後、別の作品でまたやれるかはわからないですが、今回、得られた感情のわく瞬間や瞬発力をこれからの芝居にも必ずつなげていきたいと思います。

――最終回をご覧になるかたにメッセージをお願いします。

 トキを半年間見守ってくださった皆さんには、苦しさやうれしさやいろいろな感情が生まれるであろう1話になっています。ぜひ最後までに見届けていただきたいと思います。

【プロフィール】
2002年12月19日、宮崎県生まれ。主な出演作に、ドラマ化もされた映画『ベイビーわるきゅーれ』シリーズのほか『遺書、公開。』『夏の砂の上』『禍禍女』、ドラマ『墜落JKと廃人教師』シリーズ『わたしの一番最悪なともだち』『御上先生』『アポロの歌』、Netflix『グラスハート』、などがある。2023年、第15回TAMA映画賞の最優秀新進女優賞、2026年第50回エランドール賞を受賞した。

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