気づけばスマホばかり見ている。動画、SNS、ゲーム、ニュース、買い物…見始めてるとあっという間に数時間溶けている。「一度きりの人生なのに、スマホばかり見ていていいのか?」――そんなふうに立ち止まりたくなった人におすすめの本がある。書籍『私たちはなぜ「やるべきこと」をやれないのか、「やめたいこと」をやめられないのか』(キム・ソクチェ著/岡崎暢子訳)だ。本書は神経内科専門医として脳科学分野の第一線で活躍する著者が、「自分の感情や欲望に振り回されずに生きる方法」を、脳科学・心理学・哲学の視点からわかりやすく解説した一冊。本記事では本書の発売を記念して、その内容を一部抜粋・再編集して紹介する。

なぜ私たちは、「いらないもの」までポチってしまうのかPhoto: Adobe Stock

「早くポチって!」とささやく「ドーパミン」

「限定版スニーカー入荷!」

 スマホに届いた通知から誘導されるまま、指が決済ボタンの上で震えます。

 すかさず脳内では、衝動買い担当のドーパミンがあおります。

「早く! 早く買わないと売り切れるよ?」

 やる気満々のドーパミンは、「限定」「プレミアつき」などの希少性や競争性のある状況にとくに燃え上がるのです。

 セール終了を告げるカウントダウンタイマーや赤いバナーがショッピングサイトにあふれる理由も、このドーパミンを効果的に刺激するためです。

 ドーパミンが活性化する一方で、理性的判断をつかさどる前頭前野は力をなくし、衝動買いのリング上はドーパミンの独壇場になります。

「何か買ったら幸せになれるはず」

 ここで都合の悪いことは、ドーパミンが「報酬そのもの」よりも「報酬への期待」によって分泌がうながされる点です。

 つまり、脳はモノを買う瞬間よりも、「何か買ったら幸せになれるはず」と探している過程に快感を感じているということ。買い物がやめられなくなる理由が、まさにここにありました。

 現代のマーケティングはこうした脳の性質を巧みに利用し、私たちに財布を開かせようと仕掛けてきます。

 SNSのスクロールがやめられないのも、セールや割引に目が行かざるをえないのも、すべて仕掛けによるもの。

 そしてその仕掛けが私たちのドーパミン回路を過熱させているのです。

買ったら急に興味がなくなる理由

 このように、本来、幸せホルモンであるドーパミンは、衝動買いをうながす中心的な役割を担っています。

 人間の脳は新しい刺激や報酬の可能性に敏感に反応するようにできており、新商品を見つけると手に入れたときの喜びを予測して興奮状態になります。

 しかし、いざその商品を手にするとドーパミンは急激に減少し、満足感の代わりに虚しさが押し寄せます。

 そしてこの虚しさが、また新たなドーパミン刺激を求める行動へとつながり、終わりなき消費のスパイラルが続いていくのです。

衝動買いをなくすには?

 ドーパミンの誘惑に打ち勝つには、決済する前に、脳の興奮を冷ます「ディレイ(遅延時間)」を工夫することが効果的です。

 具体的には、「カートに入れても即決せず1日寝かせて考える」「本当に必要かどうか自問する」などの方法です。

 また、衝動買いが習慣化している人は、脳の報酬系回路が買い物に振り切れてしまっている状態です。

 買い物以外の活動で、ドーパミンを刺激する「新しいルート」をつくってやるのも良い方法です。

 たとえば、定期的な運動や資格取得などの勉強、手芸や楽器演奏などの趣味活動などは「持続する報酬」をもたらし、依存を避けながら脳を健全に活性化できます。

 日常的に小さな達成感を味わう習慣をつけることで、ドーパミンの過剰な誘惑から遠ざかることができるのです。

(本稿は『私たちはなぜ「やるべきこと」をやれないのか、「やめたいこと」をやめられないのか』から一部抜粋・再編集した記事です)