ビジネスの現場では、スピードと即効性のあるアイデアが求められる。トップギアで走り続けること。そのプレッシャーに、息切れしてはいないだろうか。映画監督・長久允氏の著書『あなたにしか作れないけれど、世界に通用してしまう 脚本の教室』と独自インタビューから、一流の思考習慣を公開する。(文/飯室佐世子)
スピード正義の裏ですり減らしているもの
「明日の会議までに、面白いアイデアを3つ考えてきて」。
ビジネスの場で軽く言われるそんな一言。
私たちは常にトップギアで走り続け、頭をフル回転させて「今すぐ使える答え」を捻り出そうとする。
だが、そのプレッシャーの中で生み出したアウトプットに、あなた自身は満足しているだろうか。
急いでかき集めた情報で作った企画は、どこか薄っぺらく、他社の二番煎じのようなものになってしまわないか。
そして何より、常に「すぐ結果を出さなきゃ」と焦り続ける働き方は、確実に私たちの心と創造力をすり減らしていく。
では、常に新しい作品を生み出し続けるクリエイターは、どうやってそのプレッシャーと戦い、アイディアを枯渇させずにいるのだろうか。
くだらないメモを「未来の自分」へ埋める
サンダンス映画祭で日本人初となるグランプリを受賞した映画監督・長久允氏は、インタビューの中で自身の制作スタイルについてこう語ってくれた。
長久允氏(以下、長久):映画は、1本ずつ作るというスタイルではなくて、常に10本くらいの企画を同時に抱えながら制作していきます。
そのすべてを今すぐ完成させなきゃいけないということではなくて、時が来て条件が揃ったものが実際に映画になっていくんです。
だから、企画は常に考えています。その種となるのが、ふと思いついたくだらないメモや違和感。未来の自分のために「タイムカプセル」のように埋めておくんです。
日常の中で感じた違和感、悩み、あるいは意味不明な妄想。すぐには仕事の役に立ちそうもない、とっ散らかった感情の断片を、スマホのメモ帳にひたすらストックし続けているという。
それは、明日提出するための企画書ではなく、数年後の自分に向けて埋めるタイムカプセルなのだそうだ。
本当のマルチタスクは「熟成樽」を持つこと
アイデアに「熟成期間」を持たせる。
そうして貯めてきた企画は、ある日急に、主役に躍り出る。
長久:5年前にメモした小さな違和感が、不意に見返した時に今の自分の感情や、社会情勢とピタッと合致することがある。突然「今こそこれだ!」として動き出す瞬間があるんです。
「自分の頭の中に、いくつもの熟成樽を持っておくこと」も、マルチタスクと言えるかもしれない。
今日形にならなくても、未完成のアイデアは、まだ発酵していないだけ。一つの樽ですぐに結果が出なくても、「こっちの樽はまだ時間がかかりそうだな」と寝かせておき、別の樽を開けてみればいい。
「名もなき感情」こそが武器になる
結果を急かされる現代だからこそ、私たちはあえて「アイデアを寝かせる勇気」を持っても良いのかもしれない。
焦らなくていい。
今日埋めたその名もなき感情の断片が、じっくりと熟成され、数年後のあなたを救う最大の武器になる日が、きっと来る。

世界が注目する脚本家が初めて明かす、表現の極意!
Amazonランキング1位! (「映画の本(総合)」2026年2月21日~23日)
佐久間宣行さん、ラランド・サーヤさん大絶賛!
それっぽいもの」ではなく、
「本当に心を動かすもの」を
表現がいまいちしっくりこない。
この仕事、自分がやらなくてもいいような気がする。
もっとおもしろいものを作りたい。
そんな悩みに、現役サラリーマンでありながら、海外の映画賞で「日本人初」の快挙を総ナメしてきた著者が答えます。
どうしたら、自分だけの表現をし、それを成果に結びつけられるのか。
どんな人でも、「あなたにしか作れない作品」を生み出せるようになる、まったく新しい脚本術が誕生しました!

これからの「世界のスタンダード」を伝える
いま世界で本当に評価されるものは、「何かに似ているもの」ではありません。
ハリウッドで必ず聞かれること。それは、
“What’s your VOICE?”
あなたのボイスは何ですか?
ということです。
つまり、他の誰でもない「あなたが」何を伝えたいか、ということ。
では具体的にどうすればいいのか。
すべてを自分で切り開いてきた著者が、包み隠さず伝えます。
真剣に表現したいと思う人、自分らしさを失わずに働きたいと思う人に、とても響く内容です。
本書の内容
はじめに
「この本の結論を先に言います。」
「それっぽいもの」は最低だぜ!
王道の脚本方式と完全自己流の脚本方式をミックスして
そもそも脚本家ってどうやってなったらいいかわからない問題
Lesson0 世界一になるまでの変則ルート
「私が映画を作ったのは32歳から! おせ~!」
一度は夢をあきらめて、就職! (挫折期)
CMプランナーから、店頭ビデオプランナーに (朦朧期)
倒れて気づく。「クライアントは自分」
そして世界一。日本人初の快挙を、まさか私が。
「そもそも映画ってなんなの?」
Lesson1 何を書く?
「脚本ってなんですか?」
設計図としての書式
Step0 私は何を書くべきなのかを見つける
Lesson2 王道! ハリウッド式脚本法
「で、どうやって書くの?」
Step1 「ログライン」を書く
Step2 登場人物を作り込む
Step3 3幕構成にする
Step4 シーンを作る シーンカード入れ替え検証
Step5 セリフとト書きを書く
Interval あなたが天才かどうかという重要な話。
Lesson3 誰でもできる長久式脚本法
「めっちゃ変な書き方。それでいい。」
Step1 はじめに「怒り」と「悲しみ」がある
Step2 音楽を見つける
Step3 エンドロールの歌詞を書く
Step4 映画のタイトルを決める
Step5 ポエトリーリーディング脚本法
Step6 そのセリフをシーンや人物に振り分ける
Step7 音だけの2時間映画を作る
Step8 直し続ける
Lesson4 迷ったとき役立つかもしれない裏技集
「何も浮かばないよ!」
裏技1 絶対に誰にも言いたくない思い出を書く。
裏技2 SNSには書けない「よくない感情」という金脈
裏技3 会話のセリフがうまく書けないなら
裏技4 設定がうまく伝わってないと感じたら
裏技5 タイトルから考えちゃうっていうのはどう?
裏技6 「ポエトリーリーディング脚本法」に欠かせない号泣プレイリスト
裏技7 「うまい」は敵!
裏技8 極論! 10年書かないでみる
裏技9 おもしろくなくてもいいじゃないか(本気で言っている)
Lesson5 書いたあとどうする?
「映像化しちゃう?」
お金集めをどうするか(自腹、賞金、クラファンそれぞれのやり方)
予算別! 映画の作り方(10万円、100万円、1000万円)
実写映画撮影現場での時間削減工夫集(事前準備と心持ち)
ロケ場所についての具体的解決案
Lesson6 あなたにしか作れないものがある
「情緒不安定なあなたは向いている」
「当事者しか知らない感情がある」
「だから、本当のことしか書かない」……