2万人をみてきた組織開発コンサルタント・勅使川原真衣氏の著書『組織の違和感 結局、リーダーは何を変えればいいのか?』が刊行。坂井風太氏も「革新性がある」と絶賛した同書の内容をもとに、抜粋・再構成して特別公開する。

組織の違和感Photo: Adobe Stock

「自分でやったほうが早い」は危険信号

 新年度、気持ちも新たに、仕事を頑張ろうと思っている方も多いことでしょう。

 ただ、そんなときに気をつけたいのが、仕事を抱え込んでしまうこと。

 責任感の強い人ほど、うまく他人に頼れず、ひとりで仕事を溜め込んでしまいがちです。

 他のメンバーに仕事を振れない、また、役割分担したにもかかわらず、そのとおり実行できないということも。

 自分のチームにはこれが足りないと自覚していても、「それでも自分で何とかする」と、無理をすることで不足を個人的に抱え込むケースもあります。

 何でもかんでも自分でやらなければ、と思いすぎて、組織やメンバーのことが見えていないということになりかねません。

無理をするほど周りに気をつかわせる

 そこで一度、立ち止まってほしいのです。

「無理をしなければ」と思っている状態というのは、職場で何らかの“違和感”を察知している状態ではないでしょうか。

 そんなとき私は、「ぶっちゃけ、できそうですか?」「できるなら、今までもできたはずでは?」と尋ねます。

 そこで「難しいとは思いますが、他に頼れる人がいないので……」という答えが返ってきたら、次のようにお伝えします。

「メンバーの持ち味や武器を、どのくらいご存じですか? 周りは周りで、あなたを助けたいのに助け方がわからないという人もいらっしゃるんじゃないですか?」

「自分でやったほうが早い」、「自分の分身が欲しい」。そう嘆いて仕事をメンバーに任せることができないリーダーは、現状と目標のギャップを永遠に埋めることができません

 チームを良くしたいと本気で思うなら、「誰に何をどのくらい振ることができそうか」をよく考えてみてください。

「知的謙虚さ」とは他者と共存できること

 また、個人にとっても違和感を放置しないことは役立ちます。

 科学ジャーナリストのデビッド・ロブソンは、著書『知性の罠』(日経BP、日本経済新聞出版)で、世界中の偉人たちが陥った過ちについて、

「いずれのケースもすばらしい知能が論理的で合理的な思考ではなく、理屈づけや自己正当化に使われた」

 と伝えています。

 それを教訓に、「周囲の人に対する偏った見方を正当化したり、職場で見当違いのプロジェクトを推し進めたり」するのを防ぐのが、「知的謙虚さ」なのだと。

 私はこの「知的謙虚さ」というのは、言い換えれば、自分と異なる他者の持ち味や機能を認め共存できることでもあると考えています。

 他方で、私が大きな問題だと感じているのは、リーダーがひとりで高度なフィードバック力、コーチング力、傾聴力、質問力などのすべてを身につけるべきとする風潮があることです。

 しかし、そんな人は存在しません。

 組織にとって全体を良い方向に導ける存在が「優秀な人」であるならば、一度、周りを見渡してみてもよいのではないでしょうか。

 もしかしたらすぐ近くに、凸凹で助け合える人がいるかもしれません。