「新たな複合循環」が捉える世界の姿
現在の世界の変化の特徴は、マクロ経済、地政学、テクノロジーのそれぞれの領域で変化が生じ、かつ、それぞれの領域での変化が他領域に影響を及ぼしながら全体として1つの大きなうねりとなって動いていることにある。
そしてこの動きの1つ1つに右往左往することなく、それぞれの領域の変化と相互影響を冷静に見極めながら、全体としての大きな流れを捉えることが今、求められているのである。
筆者らは、こうしたさまざまな領域における変化とそれら変化の相互依存関係をうまく捉えるには、景気循環論の1つである「複合循環論」の概念を経済以外の分野にも援用しながら、全体としての大きなうねりを考察することが必須だと考えている。
つまり、マクロ経済、地政学、テクノロジーの領域に加え、これら領域に影響を及ぼしうるサステナビリティやサイバーセキュリティなどの分野を踏まえつつ、「新たな複合循環」に基づいて世界の姿を描くことが必要だということだ。
分断の時代における産業融合の重要性
本書の構成について簡単に紹介しておこう。本書は、書籍全体の背景や狙いを述べた序章、そして産業構造の未来像を構想するための分析パートである第I部から第III部、最後にこれまでの議論の総括と、本書の活用にあたってのインプリケーションを考察した終章の5つの構成である。
第I部「分断がもたらす世界基盤の揺らぎ」は、国際関係、安全・安心、マクロ経済、海外ビジネス・地域経済といった産業構造の変化を支えるマクロ的な環境変化を題材にしている。第I部でのキーメッセージは、地政学、安全保障、サプライチェーンといったマクロ的な環境変化の当面のトレンドは「分断」であるということだ。
第II部「テクノロジーが導く産業融合の時代」は、生成AI・データ、コンピューティング、サイバーセキュリティ、気候テクノロジーといったテクノロジーの変化を題材としている。第II部でのキーメッセージは、新たなテクノロジーが産業の「融合」を促すかたちで作用・発展するのではないかということだ。
第III部「構造変化を力に変える各分野の勝ち筋」は、第I部、第II部での分析を踏まえ、マクロ環境での分断とテクノロジーの融合という2つの潮流が交錯し、産業構造が大きく変化する中で企業の勝ち筋はどのようなものかを扱っている。
本書はPwC Intelligenceがまとめる3冊目の書籍であり、分断の時代における産業融合の重要性を論じている。これまで公刊した2冊の書籍、『経営に新たな視点をもたらす「統合知」の時代』『世界の「分断」から考える 日本企業 変貌するアジアでの役割と挑戦』と併せ、本書で展開される知見が読者の方々にとって有益なものとなれば幸いである。







