中国経済をむしばむ
高失業率による社会不安リスク
だが、このやり方には深刻な矛盾がある。最終的に地方政府が負担を引き受ける「つじつま合わせの経済成長」を続けるため、債務が膨らみ続けるのだ。
また、地方政府が抱える「隠れ負債」の担保の多くは不動産であり、その不動産市場が不況に陥っているため、不良債権化に歯止めがかからない。景気対策を打てば打つほど、実質的な債務負担は重くのしかかる。
IMFは2026年の中国経済の成長率を4.5%と見込みつつ、デフレ圧力の継続、生産年齢人口の減少、投資収益率の低下、生産性の鈍化などによって、中期的に成長率がさらに減速すると予測している。
中国共産党の維持に高成長が不可欠である一方、成長を維持すればするほどマイナス要因が悪化するという、出口のないジレンマに陥っている。
雇用面でも事情は厳しい。2月の若年失業率は16~24歳で16.1%、25~29歳で7.2%に達する。加えて2026年の大学卒業生は過去最多の1270万人に上る見通しだ。中国政府が「雇用優先」を繰り返し、新規都市雇用1200万人以上を掲げるのも当然といえる。
なお、この数字はあくまで都市部に限られており、農村部の失業は含まれていない点に注意が必要だ。
ここで仮に、中国政府が経済の膿を出すために低成長を受け入れたとしたら何が起きるか。不動産価格の下落が真っ先に懸念されるかもしれないが、より深刻なのは若年層の失業率のさらなる悪化だ。
就職できず無気力に街をさまよう若者の問題が顕在化してかなりたったが、その数がさらに拡大すれば、社会への不満が敵意へと転じるリスクがある。
各国の事例を見ても、若年失業率の急上昇は治安悪化や社会不安と連動しやすい。中国共産党にとって、それは体制の根幹を揺るがす脅威となりうる。
中国政府が無理な成長率目標を掲げ続ける真意は、マクロ経済の安定化ではない。失業率の急騰が招く「街頭の怒り」を封じ込めるための、なりふり構わぬ延命策だ。
今回の全人代は、市場への配慮ではなく、中国共産党の「保身」が経済政策の最優先事項だったと言える。







