輸出とハイテクの成功が
新たな歪みを拡大

 ただし、ハイテク分野には相変わらず強さを見せている。

 2025年の貿易黒字は約1.2兆ドル(約192兆円)と過去最大に達し、2026年初頭の経済指標でも輸出と工業生産が景気を下支えしている。1~2月の工業生産は6.3%増と市場予想を上回り、ハイテク製造業への投資も伸びた。

 EV、電池、太陽光パネル、AI、先端製造といった分野での競争力は依然として高い。中国政府が「新質生産力」や技術自立を重視するのは実際の成果に基づくものだ。

 しかし、このハイテク分野を中心とする製造業の強さが、新たな歪みをもたらしている。

 中国の家計消費はGDP比で世界平均を約20ポイント下回ると先に述べたが、裏返せば投資比率は世界平均を約20ポイント上回る。国内で吸収しきれない生産能力を輸出でさばく構造が強まっているのだ。

 輸出の成功は内需不足を補うための自転車操業であり、その結果として欧米の対中警戒と通商摩擦がさらに激しくなっている。外で勝てば勝つほど、外からの反発も大きくなる。「中国包囲網」と「デカップリング」の圧力は今後もますます強まる。

 中国政府もこの問題を認識しており、「反内巻(過当競争の抑制)」策を打ち出している。国家発展改革委員会は今年の計画で、鉄鋼や石油精製などで秩序ある能力削減を提示した。

 だが、2月の生産者物価はなお前年比0.9%下落しており、企業間の価格競争と過剰供給が続いていることを示している。CPI(物価)は春節要因で1.3%まで上昇したが、これは需要が力強いインフレではない。過剰投資と輸出拡大に依存し続けた結果、「まともに利益を出せない企業だらけ」の構造が温存されているのだ。

権力構造の変化により
保身が最優先課題に

 中国経済論でよく聞かれる言い方がある。「正しい政策はわかっているのに、政治が邪魔している」というものだ。これは事実だが、説明として不十分だ。問題の核心は「なぜ習近平政権は段階的改革すら選ばないのか」にある。

 ここには、権力構造の変化が深く関わっている。

 胡錦濤政権までの集団指導体制では、改革の失敗は体制全体の失敗として認識されたが、習近平政権は権力を一点に集中させたので、失敗はすべて「習近平の責任」である。いかなる構造改革の失敗も、習近平個人の失敗に帰せられる。