
第2次トランプ政権の誕生以降、関税をはじめ米中対立が続いている。前日本銀行総裁の黒田東彦氏が執筆するダイヤモンド・オンラインの連載『黒田東彦の世界と経済の読み解き方』の今回のテーマは、中国の将来。中国経済の成長見通しは楽観できないと考える理由とは?
第2次トランプ政権で激化する米中貿易摩擦
中国の対米貿易黒字は米国GDPの1%程度
米中間の深刻な貿易摩擦は、第1次トランプ政権(2017~21年)時代でも起こっていたが、明らかに、この時からすでに、中国の経済発展と技術進歩に恐れたヘゲモニー(覇権)争いの面があった。
25年に発足した第2次政権でドナルド・トランプ米大統領は、中国への先端技術の輸出を厳しく規制するほか、中国への依存度を低下させるために、最大145%という極端な関税を課すなど強硬な姿勢を示した。中国は125%の報復関税で対抗したものの、その後の交渉で、米国の対中関税は30%、中国の対米関税は20%に引き下げられた(引き下げ期間は11月10日まで延期)。
なお、24年の中国のGDP(国内総生産)は、米国の65%程度だ。1人当たりGDPに至っては、中国は米国の15%程度に過ぎない。
また、中国の対米貿易黒字は世界最大ではあるものの、米国のGDPの1%、中国のGDPの1.6%程度に過ぎない。ただし、経済成長率を見ると、中国が5.0%、米国が2.8%と中国が依然としてかなり高い(下図参照)。
そうした中で、米国が中国経済の急成長に懸念を抱いたのかもしれない。ただし、中国経済の長期的な成長見通しは、それほど楽観できるものではないと思う。