「学力の現在地」を確認していますか?
お母さんの話を聞いて、私が気になったのは、Sくんの「学力の現在地」でした。
「ゆとり教育」による基礎学力の低下は想像を絶するもので、いきなりハードルが上がった学習レベルについていけない子どもがとても増えているからです。
Sくんに学力テストをしてもらうと、国語が24点(偏差値36)、算数が23点(偏差値34)と、明らかに「やりなおし学習」が必要でした。
その後、学習相談や保護者セミナ―を重ねるうち、Sくんは生まれ変わったように勉強し始めました。
「小1からのやりなおし学習」や「暗記法」が、お母さんの協力もあり、うまく身についたようでした。
「よかったですね。お母さんの成果ですね」と私がそう伝えると、お母さんは、
「先生はいつも私をねぎらってくれます。西角先生は、お母さんも伸ばすスキルをお持ちなのですね」
と言って、大変驚いた様子でした。
お母さんはかつて、看護師の仕事と育児のはざまで心が揺れていました。
「子どもに迷惑をかけるので、仕事はもうやめよう」
職場に申し出ると、時間の融通のきく外来に配属してもらえることになりました。
そのうえ、師長さんから、「あなたのことを育てたい」と言われ、小児科のリーダーへの昇進を言い渡されたのです。
ご主人や家族と相談の結果、お母さんは、仕事を続けることに決めました。
「子育てもあるし、時間面では無理がきかない。でも、何かお返ししなくては」