朝ドラが「歴史に埋もれた紳士・清水卯三郎」なぜ描く?脚本家が明かした起用のワケ〈風、薫る第10回〉

直美の名前には意味があった

 おなかが落ち着いたところで職探しに行こうとするりんだったが、環が歩きたくないというので、直美に半ば強引にしばらく預けることにする。

 困惑する直美ではあったが、子どもが気になるので、教会のなかで待たせることにする。

 吉江も親切におもちゃを持ってくる。だが、彼は、捨て子ではないかと心配する。

『風、薫る』がちゃんとしているのは、話しづらいことを話すときは、少し脇に場所を移動することだ。

 第1週、自警団に足止めをくらっていた美津(水野美紀)を中村(小林隆)がちょっと脇に呼ぶのもそうだった。こういう地味だが細かい配慮はぜひ続けてほしい。それこそ医療ドラマなので、患者のいる前で大声で話すような場面があったら興ざめだ。

 意外とこういうデリカシーに欠けた場面がドラマにはある。患者さんが寝ていたり、昏睡(こんすい)状態だったりしても、話が聞こえていることもあるのに、と筆者は思うのだ。

 閑話休題。

 直美はりんが自分の親と同じように、このまま戻ってこないのではないかと疑いもするが、少なくともりんは娘に名前をつけていった。直美は教会に捨てられたときに、名前すらなかった。直美の名前の由来は聖書からだった。

 ナオミは、聖書の「ルツ記」からとられた名前。ルツ(Ruth)の義母で、ルツはダビデ(David)の曽祖母。ルツにとってナオミは姑であったが、慕われる姑であったので、朝ドラでおなじみの意地悪する姑とは違う。ナオミという名前には「快い」「楽しい」「幸せ」などの意味がある。

 直美の名前には教会で彼女を拾って育てた人たちの思いがこもっていたわけだ。りんには洞察力があるようだ。

 その頃、りんは職がなかなか見つからず困っていた。

「母親ってのはどんなにひどい亭主でも我慢するしかない」から亭主に頭を下げろと説教される始末。でもそう言った男性は妻にこっぴどく叱られる。